2024.08.05

玉露とは?テアニン豊富な高級茶の特長とおいしい玉露のいれ方のコツ

高級茶として知られる玉露。深くまろやかな甘みと香りは、緑茶の中でも格別です。日本茶の中でも0.8%しか生産されていない希少な玉露は、どのように作られるのでしょうか。※1
玉露の歴史や特長、暑い夏にぴったりなちょっと贅沢で爽やかな玉露の楽しみ方をご紹介します。

高級茶の頂点「玉露」とは?玉露の歴史と名前の由来 

玉露は、江戸時代初期に煎茶が普及したのち、1835年に江戸日本橋の茶商「山本山」六代目の山本嘉兵衛(徳翁)がさらなる高級茶を目指し、甜茶に用いられていた「覆下栽培」を煎茶にも行ったことで誕生したといわれています。

「玉露(ぎょくろ)」という名は、山本嘉兵衛(徳翁)が製茶中に茶葉を露のように丸くあぶったことが由来とされているとか。ほかにもその味が玉の露や甘露(神が降らせる甘い露)に例えられるほど素晴らしかったから、という説もあるようです。※2※3

その後、丸い形状だった玉露の茶葉は、明治初期に製茶業「辻利」の創業者である辻利右衛門によって針金状に仕上げる製法に改良され、現在の玉露製法の礎となったといわれています。※4

玉露の特長は、その名の通り「玉のような」まろやかな舌触りと強い甘みで、緑茶独特の苦みはほとんど感じられません。この味の秘密はうま味成分として知られるアミノ酸の一種、テアニンです。玉露は特別な栽培方法によりアミノ酸が豊富に含まれており、それが玉露独特の味を作り出しています。

また、玉露はビタミンも豊富です。お茶として飲んだ場合、抗酸化作用のあるビタミンCは煎茶の3倍以上、造血のビタミンといわれている葉酸は煎茶の10倍近く含まれています。さらに、ミネラルも豊富です。特に余分な塩分を排出するカリウムは、煎茶の10倍以上含まれています。玉露はおいしいだけでなく、栄養成分も豊かなお茶なのです。※5

☆玉露と煎茶の違いについてはこちらをご覧ください。
緑茶、玉露、煎茶って何が違うの?季節の和菓子との組み合わせを考える

玉露はどうして高級?玉露の特長と手間ひまかかる栽培方法

玉露の被覆栽培の様子

玉露(ぎょくろ)は、煎茶と同じチャノキの新芽を加工したものですが、栽培方法が大きく異なります。特徴的なのが、被覆栽培または覆下栽培と呼ばれる、チャノキに遮光資材の覆いをかけて、一定期間日光を遮る育て方です。

前述のうま味成分であるテアニンは、根で合成されて葉に溜まりますが、日光が当たると苦みや渋みのもとであるカテキンに変化してしまいます。覆いによって日光を遮ることで、この変化を抑えているのです。さらに光量が少ないために、茶葉の葉緑素(クロロフィル)が多く作られて葉の緑色が濃くなり、「覆い香」と呼ばれる海苔のような独特の香りも生まれます。※6

被覆栽培で作られるお茶は、玉露のほかにもかぶせ茶などがありますが、かぶせ茶が7〜14日ほどの被覆期間であるのに対し、玉露は20日間ほどにわたります。

日々、日光が当たらないように管理しながら遮光率を調整するなど、一般的なお茶の何倍も手間や経費をかけて作られ、さらに限られた産地でしか栽培されていないため、希少性が高いというわけです。実際、玉露の生産量は、日本茶全体の1%もありません。※1

玉露の三大産地として有名な京都宇治、静岡朝比奈、福岡八女

玉露の茶葉のイメージ画像

玉露の生産量は三重県が全国1位※1ですが、玉露の三大産地としてよく挙げられるのは、京都宇治、静岡朝比奈、福岡八女です。

京都・宇治は玉露発祥の地です。江戸時代には玉露の生産は宇治だけで許されており、天皇などへの献上品とされていました。チャノキの覆いは化繊の寒冷紗が使われるケースが増えていますが、宇治の一部の茶園では現在もよしずやわらを用いる「本ず被覆」と呼ばれる方法で生産されています。天然素材で作られた覆いは、特有の香りと甘みを作り出すといわれています。※7

静岡・朝比奈の玉露は、針のように揉みあげられた茶葉が特長で、香りとまろやかな甘みが魅力です。静岡はお茶の栽培に適した気候のおかげで古くから栽培されていますが、朝比奈で玉露が作られるようになったのは明治時代です。※8

福岡・八女の玉露は、特定の生産方法をクリアして作られた農業製品だけに与えられるGI認定を受けています。チャノキの仕立て方や肥料の管理、被覆方法、摘み方などが細かく規定され、それらをクリアして生産された玉露だけが「八女伝統本玉露」として認められます。※9
三大産地の玉露の飲み比べという贅沢を、いつか味わってみたいですね。

甘みを引き出すおいしい玉露のいれ方 水出しの方法も紹介 

玉露の水出しの様子

貴重な玉露を手に入れたら、おいしくいただきたいですよね。玉露をおいしくいれるには、低温の湯(50〜60℃)でじっくり時間をかけてうま味成分を引き出すのがポイントです。

玉露のいれ方
①沸騰させた湯100mlを湯冷ましや湯のみに入れて、50〜60度になるまで冷まします。
湯を注いだ湯のみを手で持って、熱さを感じないくらいが適温です。

②急須に茶葉を約10g入れ、湯冷ましした湯を茶の葉が浸るくらいに注ぎ、約2分半待ちます(茶葉が5〜6割開く程度)。

③それぞれの湯のみに均等に注ぎ、最後の一滴までしっかり注ぎ切ります。
急須に湯が残ってしまうと、二煎目以降の味が落ちてしまいます。※10

ごくごく飲むというより、少しの量を最後までじっくり味わう「つゆ茶」が楽しめるのも玉露ならでは。二煎目、三煎目もおいしさがキープされているので、味や香りの違いを楽しみましょう。二煎目以降はお湯の温度を少しずつ上げ、浸出時間を短くするのがポイントです。

渋みのない玉露は、水出しもおすすめです。冷蔵庫で30分〜2時間、水出しするとうま味成分テアニンが多く抽出され、まろやかな甘みがいっそう感じられます。また、お茶の葉に氷をのせて2時間ほど待つとでき上がる「氷出し」もおすすめです。

葉の柔らかい玉露は、お茶をいれた後の茶殻も食べられます。いれ終わったあとの茶殻は捨てずに、岩塩やポン酢をかけておひたしとしていただくのもおすすめです。

玉露に限らず、お茶の保管には熱、光、湿気が大敵です。できるだけ空気に触れないよう可能な限り密封して、蛍光灯や日光の当たらない涼しいところで保管しましょう。
今年の夏はとっておきの玉露で、涼しく贅沢に過ごしてみてはいかがですか。

【参考文献】
※1 農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/seisan/tokusan/cha/attach/pdf/ocha-80.pdf
※2 山本山(株)
https://www.yamamotoyama.co.jp/about/company/history/
※3 宇治の露製茶株式会社
https://www.ujinotsuyu.co.jp/learn/2021-03-05-01-33-09
※4 辻利茶舗の歴史
https://www.tsujiri.co.jp/history
※5 全国茶生産団体連合会・全国茶主産府県農協連連絡協議会
https://www.zennoh.or.jp/bu/nousan/tea/katsuyou01a.htm
※6 京都府 HP
https://www.pref.kyoto.jp/chaken/teanin.html
※7 宇治市HP
https://www.city.uji.kyoto.jp/site/uji-cha/16203.html
※8 藤枝市HP
https://www.city.fujieda.shizuoka.jp/trip/buy/1450143436769.html
※9 八女市HP
https://www.city.yame.fukuoka.jp/soshiki/5/5/1/1457574007975.html
※10 京都府 HP
https://www.pref.kyoto.jp/chaken/irekata_gyokuro.html

  • 澤 晶子

  • ライタープロフィール
    澤 晶子(サワ アキコ)
    WEB編集者・ライター
    長年、学習塾・家庭教師勤務。フレンチ・イタリアンレストランでの勤務経験も豊富。趣味は食べ歩きと料理。季節のグルメのお取り寄せにも目がなく、特に地方限定銘菓が大好きです。