2024.10.07

求肥(ぎゅうひ)って何?和菓子作りに大活躍!おもち、白玉、すあまとの違いって?

もちもちとしながらも歯切れのよい求肥は、さまざまなお菓子に活用されています。和菓子などでは欠かせない存在の求肥ですが、どのように作られているのでしょうか。
不思議なネーミングの由来や求肥を使ったお菓子について紹介しながら、求肥の魅力を探ります。

もち米で作るけどもちじゃない!?時間がたってもやわらかい求肥とは?

求肥

求肥(ぎゅうひ)とは、粉状にしたもち米に砂糖や水あめを混ぜて練り上げた弾力がある柔らかい食べ物です。一見、おもちのようですが、おもちは時間が経つにつれどんどん硬くなるのに対して、求肥は数日経っても硬くなりません。また不思議なことに冷凍しても硬くなることがありません。

その秘密は、求肥に練り込まれた砂糖や水あめにあります。レシピにもよりますが、求肥には主な材料のもち粉と同量〜2倍もの砂糖が入っています。砂糖や水あめの糖はデンプンと一緒になると保水性が高くなり、水分をかかえこんでキープし続けます。そのため求肥はおもちと違い、時間が経っても柔らかいままなのです。※1

一般的に求肥は、もち粉に水を加えて練り、砂糖や水あめを入れ、加熱しながら練り上げる、「水練り」という製法で作られます。これに、「茹でる」「蒸す」という工程をプラスした求肥もあり、それぞれ舌触りが微妙に異なります。「茹で練り」はより柔らかくなり、「蒸し練り」は日持ちしやすくなります。

求肥は材料も作り方もシンプルなので、電子レンジを使えば家庭でも簡単に作ることができます。もち粉がなければ白玉粉でもOK。職人さんの味には及ばないかもしれませんが、手作りの求肥はふわりと柔らかく、作りたてならではの味を楽しめます。

実は「牛皮」だった!?求肥の名前から分かる日本の食の歴史

求肥は平安時代、中国から日本へ伝わったとされています。室町時代には京都で、そして江戸時代始めには江戸で作られるようになったもので、長い歴史を持っています。ところがこの求肥、日本にやって来たときには、「求肥」ではなく「牛皮」という字があてられていました。こんなに白くて柔らかいのに「牛の皮」という名前をつけるなんて、ちょっと不思議な気がしますよね。

実は当時は精製した白砂糖はまだ普及しておらず、甘味料として入手しやすいのは黒砂糖でした。使用するお米も玄米中心だったため、当時の人々が目にする求肥は真っ黒だったのだとか。見た目も感触もなめした牛の皮に似ていたため、「牛皮」と名付けらたようです。※2

ただし、日本では仏教思想により7世紀から明治時代まで公には牛を食べることが禁じられていました。その頃の日本人にとっては本物の牛の皮でなくても「牛」と名のついたお菓子を食べることはできなかったのでしょう。そこで伝来した「牛皮」は「求肥」と字を改められ、今に伝わっています。

ちなみに求肥の「肥」という漢字には「豊かになる」という意味があります。ですから「求肥」という名は、これはこれで縁起の良いネーミングだといえそうです。

白玉、すあま…求肥とよく似た食品との違いは?

求肥

稲作が盛んな日本には、求肥とよく似たお米由来の食品がたくさんあります。まず「おもち」ですが、おもちはもち米を蒸し、搗(つ)いて弾力を出したものです。一方、求肥は前述のようにもち米をいったん砕いて粉状(もち粉)にしてから糖分を加えて練っています。そのため求肥はおもちの風味を残しつつ、おもちより伸びがあり柔らかい仕上がりになります。

また、みたらし団子やあんみつに入っている「白玉」は、おもちや求肥と同じもち米由来ではありますが、おもちで使う「蒸した米」でも、求肥で使う「もち粉」でもなく、「白玉粉」を使います。白玉粉は水につけたもち米を挽(ひ)き、沈殿物を乾燥させたもの。粒子が細かいので、白玉粉で作った団子はのど越しがよく、つるりとした食感です。また白玉団子は生地に砂糖を入れず、丸めたあと茹でて冷やすので、求肥ほどの伸びや粘りはありません。

さらに関西ではあまり見かけませんが関東ではよく知られている「すあま」も、求肥に似たお菓子です。求肥と作り方は似ていますが、すあまはもち米ではなく「うるち米(ご飯として炊いて食べるお米)」由来。そのため、すあまには求肥のような伸びはなく、簡単にさくりと噛み切ることができます。

同じお米由来のおもちに似たお菓子でも、材料や製法でさまざまな食感や味を楽しめるのが面白いですね。※3

混ぜたりくるんだりくるまれたり――求肥は和菓子からグミまで大活躍

求肥

求肥は派手な存在ではありませんが、和菓子には欠かせない存在です。まず求肥は「あんみつ」や「みつまめ」に添えたり、そのままお菓子として食べることができます。福井県の名産「羽二重もち」も求肥です。なめらかで光沢のある求肥を絹織物になぞらえた、絹織物の産地ならではのネーミングですね。

伸びがよく、時間が経っても冷凍しても硬くならない求肥は、何かをくるむのにもぴったり。「生八つ橋」の皮や、あんこやフルーツ、アイスクリームなどをくるんだ「大福」の皮として大活躍です。またカステラで求肥をくるんだ「若鮎」のように、求肥をくるんだお菓子も人気があります。くるんでもくるまれても、求肥は餡や生地の味を邪魔せず、上品なもちもち感を演出します。

和菓子の代表「練り切り」にも求肥は欠かせません。白餡だけでは乾燥したりボソボソするため、あの美しい形を作ることはできないそうです。そこで生地に求肥をつなぎとして練り込むことで、なめらかで発色の良い練り切りが生まれるのです。

最近では求肥のもちもちした食感をいかし、グミの材料としても使われるなど、求肥の活躍の場はさらに広がっています。伝統的な和菓子に欠かせない求肥ですが、まだまだ新しい可能性を秘めているようです。

☆和菓子についてはこちらでもご紹介しています。
和菓子の日とは?和菓子の日の歴史と厄除けと招福の関係

米粉を使ったおもちのような食感のグミ!
三幸製菓の新感覚グミ「もちきゅあ」についてはこちらをご覧ください。

【参考文献】
※1 農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2111/spe1_02.html
※2 雪印メグミルク
https://www.meg-snow.com/fun/academy/trivia/trivia_025.html
※3 東海農政局
https://www.maff.go.jp/tokai/seisan/shinko/komeko/type.html

  • 澤 晶子

  • ライタープロフィール
    澤 晶子(サワ アキコ)
    WEB編集者・ライター
    長年、学習塾・家庭教師勤務。フレンチ・イタリアンレストランでの勤務経験も豊富。趣味は食べ歩きと料理。季節のグルメのお取り寄せにも目がなく、特に地方限定銘菓が大好きです。