2024.11.05

必須アミノ酸「トリプトファン」とは?お米などに含まれる幸せホルモンの源

アミノ酸の一種であるトリプトファンは、健康維持に欠かせない存在です。さらに、心を穏やかにする「幸せホルモン」のもとになることもわかっています。毎日の食事からトリプトファンを効率よく摂取して、心と体の健やかさを保ちましょう。
今回はトリプトファンの解説と、摂取におすすめな食べ物をご紹介します。

心の安定にも影響?タンパク質と必須アミノ酸「トリプトファン」の関係とは

昨今のプロテインブームから頻繁に聞くようになった「アミノ酸」。アミノ酸とはプロテイン、つまりタンパク質を構成する成分です。タンパク質は筋肉や肌、髪、内臓など体の組織のもとになるほか、体の機能を調整するホルモンや酵素、免疫で活躍する抗体の材料にも使われます。タンパク質が体内でどのような役割を担うかは、そのタンパク質を構成するアミノ酸の種類や組み合わせ、数によって決まります。※1

人の体を作るアミノ酸は全部で20種類。そのうち、体内で合成できない9種類が「必須アミノ酸」と呼ばれており、そのなかのひとつに「トリプトファン」があります。トリプトファンはタンパク質の構成成分になるだけでなく、心の安定や良質な睡眠に欠かせない存在として、近年注目を浴びています。

トリプトファンを摂取して幸せホルモン「セロトニン」を増やそう!

必須アミノ酸

できるだけイライラしたり落ち込んだりすることなく、心穏やかに毎日を過ごしたいですよね。心の安定には「セロトニン」という物質が関わっていることがわかっています。セロトニンは、脳内に存在する神経伝達物質のひとつです。同じ神経伝達物質にはドーパミンやノルアドレナリンがありますが、それぞれ心に対して異なる働きをしています。

ドーパミンは喜びや快楽をもたらし、心を前向きにしてやる気を引き出す物質です。一方で、ノルアドレナリンは恐怖や怒り、集中に関わります。※2

セロトニンにはこれらの神経伝達物質をコントロールすることで心を安定させ、幸福感を高める働きがあります。その働きから、セロトニンに付けられた別名は「幸せホルモン」。セロトニンは心のバランスを保ち、日々を機嫌よく過ごすために欠かせないものといえるでしょう。

セロトニンは必須アミノ酸のひとつである「トリプトファン」から作られます。そのため、トリプトファンの摂取が不足するとセロトニンの量も少なくなり、心が不安定になってしまいます。セロトニンを増やすためにもトリプトファンを積極的に摂り入れて、心を穏やかな毎日を送りたいものですね。

睡眠の質を上げるには?トリプトファンと眠りのホルモン「メラトニン」

必須アミノ酸

幸せホルモンであるセロトニンは、睡眠の質にも関わります。トリプトファンから作られたセロトニンは、夜が近づくと「メラトニン」というホルモンに変わります。メラトニンの働きは睡眠を促すこと。ところが、セロトニンの量が少なければメラトニンも十分に分泌されず、寝つきが悪くなります。その結果、睡眠の質は低下し、さらにはセロトニン不足による不安や緊張も相まって、不眠症などさまざまな症状の一因となることも考えられます。

それでは、快眠のためにはどのようなことを心掛けるとよいのでしょうか? まず意識したいのが、運動習慣と入浴のタイミング、そして朝の光を浴びることです。

運動習慣がある人は、不眠が少ないことがわかっています。日常的に体を動かす習慣がなかったという人は、この機会に生活習慣のひとつとして運動を取り入れてみましょう。ただし、いきなり激しい運動をすると体に負担がかかったり、逆に睡眠を妨げてしまうため、軽めのランニングや普段より少しだけ速度を上げた散歩など、毎日続けられる軽めの有酸素運動を始めるとよいでしょう。

また、入浴のタイミングとして、就寝時間の2時間から3時間ほど前に体を温めるのがポイントです。このとき、熱い湯船につかって無理をして体を温める必要はないので、リラックスできるぬるめのお湯や半身浴など体調を考慮した入浴方法を選択しましょう。

そして、朝の光を浴びて体内時計を整えることも大切です。人間の体内時計の周期は約25時間といわれており、朝の光は体内時計のずれを戻す働きがあります。毎朝起床直後にカーテンを開け、太陽の光を浴びて睡眠の質を高めて行きましょう。※3

お米からトリプトファンを摂取して心も体も健康に

必須アミノ酸

幸せホルモンであるセロトニンや睡眠に関わるメラトニンを増やすには、トリプトファンが必要です。トリプトファンは体内で合成されない必須アミノ酸であるため、食べ物から摂取しなければなりません。

トリプトファンはアミノ酸の一種なので、タンパク質を含む食品から摂取できます。とくにトリプトファンを多く含んでいるのは、牛乳やヨーグルト、チーズなどの乳製品、豆腐や納豆などの大豆製品、卵、バナナです。

そしてトリプトファンからセロトニン、メラトニンへの合成をスムーズにするには、ビタミンB6と一緒に摂取することが望ましいとされています。そこで、タンパク質とビタミンB6をともに含む鶏肉や魚介類の摂取もおすすめです。※4

日本人にとって身近な食べ物であるお米も、トリプトファンが多く含まれています。お米は糖質が多い食べ物というイメージがあるかもしれませんが、実は必須アミノ酸のほとんどがお米に含まれています。

食事でお米を食べるのはもちろん、間食でお米から作られているおせんべいを食べることでもトリプトファンを補給できます。食事だけではなくおやつでも、心と体の健康を保つトリプトファンを積極的に取り入れてみてはいかがですか。

☆必須アミノ酸についてはこちらでもご紹介しています。
必須アミノ酸とアミノ酸スコアって?お米が体にいいといわれる理由とは

【参考文献】
※1 公益財団法人 長寿科学振興財団
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/tanpaku-amino.html
※2 厚生労働省 e-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-074.html
※3 文部科学省
https://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/katei/08060902/003.pdf
※4 山梨県厚生連健康管理センター
https://www.y-koseiren.jp/column/season/3224

  • いしもとめぐみ

  • ライタープロフィール
    いしもとめぐみ
    管理栄養士。一般企業勤務を経て、栄養士資格を取得。病院給食、食品メーカーの品質管理、保育園栄養士を経験。現在は、栄養・健康分野の記事執筆を中心に活動中。日本ワインとおいしいものが大好き。