強い骨を作るためにはカルシウムの摂取が必要ですが、そのカルシウムの吸収を助ける役割を果たしているのがビタミンDです。ビタミンDを補うには食べ物から取り入れるだけでなく、太陽の光も浴びましょう。今回は、強い骨を作るために欠かせないビタミンDの重要性を解説するとともに、ビタミンDの摂取におすすめの食べ物をご紹介します。
カルシウムだけでは強い骨は作れない?
実は大事なビタミンDの効果
カルシウムは強い骨を作るために欠かせない栄養素として知られています。毎日牛乳やヨーグルト、小魚などを食べ、積極的にカルシウムを補給しようと心がけている方も少なくないでしょう。しかし摂取した量がすべて体内で利用されるわけではなく、カルシウムの吸収率は成人で25〜30%程度にすぎません。
そこで、カルシウムの吸収を助ける栄養素として注目されているのが「ビタミンD」です。ビタミンDには小腸でのカルシウムの吸収を促進する作用があります。
またカルシウムの一部はカルシウムイオンとして血液中にもあり、血液の凝固やホルモンの分泌に関わっています。血液中のカルシウムイオンの濃度もビタミンDが足りているかどうかに左右されています。※1
このように、カルシウムの効果を引き出すためにはビタミンDが必要なので、カルシウムの摂取に努めるとともに、ビタミンDも十分摂るよう心がけましょう。
紫外線対策でビタミンDが不足する?
日光浴で骨の健康を守ろう
厚生労働省による「日本人の食事摂取基準」では、成人女性のビタミンDの摂取目安量は1日9.0μgとされています。一方、令和4年の「国民健康・栄養調査」によると成人女性におけるビタミンDの平均摂取量は1日6.1μgであり、目安量に届いていないのが現状です。※2
ビタミンDは食べ物からの摂取に加えて、紫外線によって皮膚でも産生されます。ところが紫外線はシミなど肌のトラブルの原因でもあるので、日差しが穏やかな冬場でも日焼け止めなどを使用している人が増えています。紫外線対策をしていると皮膚でビタミンDが産生されにくくなる可能性も考えられるので、食品からの摂取量不足をカバーするには難しいかもしれません。
ビタミンDが不足すると心配されるのがカルシウム吸収率の低下で、とくに閉経後の女性は骨がもろくなり骨折しやすくなる「骨粗しょう症」のリスクが高まるため、注意が必要です。
骨の健康を守るには、適切な日光浴で紫外線を浴びて皮膚でのビタミンDの産生を促すことが大切ですが、それが難しい場合には食べ物からビタミンDを補うことを意識しましょう。
骨の健康維持は国が取り組む課題?強い骨作りが大切な理由
骨の健康維持は、今や国を挙げて取り組むべき課題であると認識されています。国民の健康増進を目的に健康寿命の延伸をはじめとした課題に取り組む「健康日本21(第3次)」では、「女性の骨粗しょう症検診受診率の向上」が新たな目標として設定されました。
また、高齢者に関する目標として掲げられている「ロコモティブシンドロームの減少」にも骨の健康が関わっています。ロコモティブシンドロームは通称「ロコモ」と呼ばれ、身体を動かすために関わる組織や器管である運動器の障害により、移動機能が低下した状態を指します。具体的には、関節の痛みや筋肉の衰えなどによって立ち上がる動作や歩行などが難しくなります。※3
骨粗しょう症が原因で骨折する高齢者は珍しくありません。高齢者の骨折は若い人に比べて回復に時間がかかるため、その間に運動機能が低下してロコモが進行するおそれがあります。ロコモを防ぐには骨の健康維持が重要だといえるでしょう。
さらに、ロコモで日常動作が困難になり自力で生活できなくなると「フレイル」になる可能性もあります。フレイルとは加齢により心身の機能が衰えた状態のことです。※4
フレイルに陥りそのまま介護が必要になれば、生活の質が大きく低下するおそれもあります。
年齢を重ねても健やかで自立した生活を送るためには、骨の健康を守ることが重要です。元気に体を動かせるときからカルシウムとビタミンDを十分摂取して、強い骨を作りましょう。
強い骨のために
日光浴とあわせて意識したい、食べ物からのビタミンD摂取
骨の健康に欠かせないビタミンDは、鮭やイワシなどの魚類に多く含まれています。
またきのこ類もビタミンDが豊富で、なかでも干ししいたけは日光を浴びて紫外線にさらされることで、ビタミンDの含有量が増える特性があります。
さらに、ビタミンDを含むこれらの食品とともに、カルシウムが豊富な牛乳、乳製品、大豆製品などを摂取するとよいでしょう。とくに骨ごと食べられるしらす干しなどの小魚は、カルシウムとビタミンDを一緒に摂取できるおすすめの食品です。
骨は加齢とともに衰えるため、骨の健康は誰にとっても重要な問題です。適切な日光浴を心がけながら、カルシウムとビタミンDを含む骨を強くする食べ物を積極的に取り入れていきましょう。※5
☆カルシウムを含む食べ物についてはこちらもご覧ください。
・秋バテや残暑の熱中症対策に必要!ミネラルの一種「カルシウム」の補給におすすめの食べ物は?
☆カルシウムと同じく体に欠かせないアミノ酸についてはこちらをご覧ください。
・必須アミノ酸とアミノ酸スコアって?お米が体にいいといわれる理由とは
☆4個装(8枚)に牛乳200ml分のカルシウム入り!
小魚の旨みたっぷりの「じゃこ気分」をおやつ、お茶うけ、おつまみにどうぞ。
【参考文献】
※1 厚生労働省 e-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-042.html
※2 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001296359.pdf#page=28
※3 公益財団法人 長寿科学振興財団
https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/locomotive-syndrome/about.html
※4 公益社団法人 東京都医師会
https://www.tokyo.med.or.jp/citizen/frailty
※5 公益財団法人 骨粗鬆症財団
https://www.jpof.or.jp/Portals/0/images/publication/leaf_02_181003.pdf
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ライタープロフィール
いしもとめぐみ
管理栄養士。一般企業勤務を経て、栄養士資格を取得。病院給食、食品メーカーの品質管理、保育園栄養士を経験。現在は、栄養・健康分野の記事執筆を中心に活動中。日本ワインとおいしいものが大好き。
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