2024.07.01

熱中症や夏バテ予防のための水分補給 ポイントは水分と塩分の摂取!

今年の夏も全国的に猛暑が予想されています。気温が高くなると、夏バテだけではなく熱中症も心配です。夏の暑さに負けないためには、体内の水分と塩分のバランスを保つことが大切です。
今回は、体と水分の関係を解説し、夏の水分補給のポイントや水分補給に適した飲み物、熱中症対策になる塩分補給の方法を紹介します。

人間の体重の約60%は水分!体内の水分の働きとは

私たちの体の多くは水分でできています。新生児では体重の80%、乳児は70%、幼児は65%、成人女性は55%、成人男性は60%、高齢者は50〜55%を「体液」と呼ばれる水分が占めています。例えば体重60kgの男性の場合、約36kg分が水分となります。※1※2

食事や飲み物からとった水分は、腸から体内に取り込まれ、血液などの体液となって体内を循環します。酸素や栄養を細胞に運び、老廃物を尿として排出するほか、体温が上昇したときは、体にこもった熱を運び、汗として皮膚から逃がして体温調整を助けています。また、新陳代謝にも関わっています。

このように体内の水分は生命維持にかかわる重要な役割を担っているため、水分が不足すると健康に重大な影響が生じます。体内にある水分が5%失われるだけで脱水症状や熱中症の症状が現れ、20%失われると死に至るといわれています。

私たちは普通に生活しているだけで呼吸や汗、尿などで大量の水分を失っています。厚生労働省によると、1日に失われる水分の量は2.5Lにも及ぶとされています。体の機能を維持するためには、食事からの摂取や体内で作られる水分量を除いて、1日1.2Lを飲み水から補給する必要があるのです。※1※2

夏の水分補給のタイミング 何時間おきが正解?

夏の水分補給のタイミングとは

夏場は発汗により特に水分が失われやすい時期です。1.2Lよりも多くの水分を摂るよう心掛けましょう。1日1.2L以上と聞くと大変に思うかもしれませんが、起床・朝食・昼食・夕食・入浴後・就寝時にコップ1杯分(200ml)を飲むよう心掛け、そこにプラスして休憩時間などでも摂取すると、水分不足を防ぐことができます。

ただし、就寝直前に水分を摂りすぎると夜間に尿意で目が覚めてしまい睡眠の質を下げる恐れがあります。睡眠不足も熱中症の原因になるため、飲み過ぎには注意しましょう。

気温が高い日は、体を動かしていなくても知らず知らずのうちにじんわり汗をかいているものです。体温を一定に保つために、体には私たちの意思とは関係なく汗をかく仕組みが備わっています。「喉が乾いた」と感じたときにはすでに体から水分が失われており、脱水症状がはじまっています。

脱水症状の予防には、喉の渇きを感じる前に、こまめに水分を摂ることが大切です。外出前やスポーツに取り組む前など「これから汗をかきそうだな」と思ったときには、あらかじめ水分を摂っておきましょう。

特に意識的に水分を補給したいタイミングは、起床時と入浴後です。睡眠中や入浴中も私たちはたくさんの汗をかいていますが、どちらも汗をかいていることに気づきにくい状況です。起床時と入浴後に水分を摂る習慣をつけて、脱水症状を防ぐようにしましょう。※2

熱中症予防には水分と一緒に塩分補給も忘れずに

猛暑日が増加傾向の近年

最高気温が35℃以上になる「猛暑日」の年間日数は、1910〜1939年の30年間の平均年間日数(約0.8日)と1994〜2023年の平均年間日数(約2.9日)と比較すると、約3.8倍に増加しています。※3
この暑さにより、夏バテだけではなく、熱中症にかかる危険性も高まっています。
熱中症とは、体内の水分やミネラルのバランスが崩れて体温が上昇し、体が正常に機能しなくなった状態のことです。

汗の成分にはナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルが含まれています。夏は発汗により、水分とともにこれらのミネラルも大量に失われてしまうため、熱中症にかかりやすくなります。このため、熱中症の予防には、水分とともにミネラルの摂取が欠かせません。

汗に含まれるミネラルのうち、多くの割合を占めるのはナトリウム(塩分)です。汗を大量にかいたときは、水分とともに塩分を補給しましょう。厚生労働省では、熱中症対策として100mlあたりのナトリウム量が40〜80mg(食塩相当量が0.1〜0.2g)の飲料を推奨しています。水分とミネラルを効率よく補えるスポーツドリンクまたは経口補水液を飲む以外に、塩分補給には、塩気のある米菓や梅干し、塩あめや塩分入りタブレットを摂り入れるのもおすすめです。

熱中症は真夏に起こりやすいと思われがちですが、じつは梅雨時期から多く発症しています。急に気温が高くなるこの時期は、体が暑さに慣れないため、汗をうまくかけず、熱中症にかかりやすくなります。また、湿度が高くて風がない日や、睡眠不足や二日酔いなどで体調を崩しているときも熱中症のリスクが高まるため注意が必要です。※4

夏の水分補給におすすめの飲み物は?

ミネラルを含む麦茶

前述のとおり夏の水分補給には、水分と一緒にミネラルを補うことがポイントです。
夏の水分補給に適した飲み物は、ミネラルが含まれているミネラルウォーターや麦茶です。
大量に汗をかいた場合や熱中症対策にはスポーツドリンクが有効です。ただし、スポーツドリンクは糖質を多く含んでいる点に注意しましょう。

熱中症対策のために飲みすぎを避けたい飲料もあります。例えば、コーヒーや紅茶、緑茶はリラックスタイムのお供にぴったりの飲み物ですが、カフェインを多く含みます。カフェインの利尿作用で体内の水分が排出されてしまうため、日常の水分補給としてはあまり適しません。

また、暑い夏は冷えたビールやハイボール、スパークリングワインを爽やかに楽しみたい季節ですが、お酒に含まれるアルコールにも体内の水分を排出する作用があります。たくさん摂取するほどに体から水分が失われ、脱水症状に陥りやすくなります。お酒では水分補給にならないことを覚えておきましょう。※5

熱中症や夏バテの予防には、水分と同時に塩分などのミネラルを補うことが大切です。生活のなかで水分とミネラルをこまめに補給して、夏を元気に乗り切りましょう。

☆熱中症予防の塩分補給には、塩気のあるおせんべいもおすすめです。
おせんべいの原料であるお米の健康効果について、こちらもあわせてご覧ください。
必須アミノ酸とアミノ酸スコアって?お米が体にいいといわれる理由とは


【参考文献】
※1 環境省「熱中症環境保健マニュアル2022」
https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_full.pdf
※2 厚生労働省「健康のため水を飲もう講座」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000205776.pdf
※3 全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)
https://www.jccca.org/download/13162
※4 農林水産省「熱中症対策」
https://www.maff.go.jp/j/seisan/sien/sizai/s_kikaika/anzen/attach/pdf/nechu-44.pdf
※5 厚生労働省「熱中症を予防するため 適切な水分及び塩分の補給をしましょう!!」
https://jsite.mhlw.go.jp/kanagawa-roudoukyoku/var/rev0/0120/4076/20176994932.pdf


  • いしもとめぐみ

  • ライタープロフィール
    いしもとめぐみ
    管理栄養士。一般企業勤務を経て、栄養士資格を取得。病院給食、食品メーカーの品質管理、保育園栄養士を経験。現在は、栄養・健康分野の記事執筆を中心に活動中。日本ワインとおいしいものが大好き。