「間食は太るからよくない」と思っていませんか?心を充足させる間食は、実は摂り方次第ではさらに健康のサポートにも役立ちます。ただし、食べ過ぎは肥満につながるため、何をどのくらい食べるのかを意識することが大切です。本記事では、間食とは何かを解説したうえで、そのメリットや適切な摂り方、間食で摂取したい栄養素についてご紹介します。
小腹を満たすだけではない、
おやつの時間にコミュニケーションを
間食とは文字通り、食事と食事の間に食べるものです。現代人は生命を維持するために必要なエネルギーを、朝食・昼食・夕食という3度の食事から十分に摂取しており、間食は必ずしも必要なものではありません。では、間食にはどのような役割があるのでしょうか。
間食を習慣にしている方のなかには、甘いものが好きで、おやつを食べると喜びを感じる方もいらっしゃるでしょう。忙しい仕事や家事の合間におやつを食べて、ほっとひと息つくように、間食を気分転換に活用しているという方も少なくはず。
さらに、間食はコミュニケーションを円滑にし、人と人とのつながりを深めることにも役立ちます。たとえば、お菓子を囲みながら家族や友人と談笑する時間は、心温まるひとときです。職場の休憩中に同僚とお菓子を食べながら話していると、リラックスした雰囲気になり、親睦が深まるなんてこともありますよね。
つまり、間食は心を満たし、人間関係を豊かにする役割があるといえます。
間食におせんべいを楽しみながらトリプトファンを摂ろう

間食は、生活に喜びや楽しみを与えるもの。そのように考えるなら、間食に「トリプトファン」を含む食品を選ぶことで、さらに高い幸福感が得られるかもしれません。
トリプトファンとは、たんぱく質を構成するアミノ酸の一種です。体内では、セロトニンという神経伝達物質の材料になります。※1
セロトニンの役割は、喜びや快楽の感情に関わるドーパミン、恐怖や驚きの感情を引き起こすノルアドレナリンなど、ほかの神経伝達物質をコントロールして精神を安定させることです。この働きにより心が穏やかになり、幸福感が高まると考えられており、セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれています。※2
セロトニンのもとになるトリプトファンは、体内で合成されない「必須アミノ酸」に分類されます。そのため、トリプトファンは食品から補わなければなりません。※2トリプトファンを多く含む食品には、牛乳や乳製品、大豆製品、卵などがあります。さらに、日本人にとって身近な食品であるお米にもトリプトファンが含まれています。
お米から作られているお菓子といえば、おせんべいですよね。間食におせんべいを食べることは、幸せホルモンの材料となるトリプトファンの摂取にもつながります。
☆幸せホルモン「トリプトファン」についてはこちらもご覧ください。
・必須アミノ酸「トリプトファン」とは?お米などに含まれる幸せホルモンの源
毎日をサポート!間食で無理なく栄養バランスを整えよう

間食は、健康の維持にも役立ちます。近年はライフスタイルが多様化していますが、間食を上手に活用すれば、ご自身の生活に合わせて効率よくエネルギーを補給できます。
残業で帰宅が遅くなり、昼食から夕食までの時間が空いてしまうという方は、夕方ごろに間食を摂るのがおすすめです。間食で小腹を満たしてエネルギーを摂取しておけば、残業も集中しやすくなります。また、日中の仕事が忙しく、昼食をゆっくり食べる時間を取れないという方は、仕事をしながら片手で食べられる間食で昼頃にエネルギーを補いましょう。※3
また、間食は「新型栄養失調」の対策としても活用できます。新型栄養失調とは、偏った食生活により、エネルギーや特定の栄養素が不足している状態のこと。新型栄養失調になると、貧血やむくみなどの体調不良、感染症リスクの増加などの悪影響があらわれるおそれがあります。※4※5
たとえば、朝食を抜くなどして1日2食になると、必要なエネルギーや栄養素を十分に摂取できなくなります。また、パンや麺類など炭水化物中心の食生活が続くと、エネルギーは足りていても、ビタミンやミネラル、食物繊維が不足しやすくなるでしょう。
そこで、活用したいのが間食です。間食は、必ずしもお菓子である必要はありません。おにぎりやサンドイッチを食べると、エネルギーを補給できます。サラダや野菜スープでビタミンやミネラル、食物繊維を補うことも可能です。
ライフスタイルは人によって異なり、1日3食、決まった時間に食事を摂ることが難しい場合もあります。健康を維持するために、ご自身の生活に合った形で間食を取り入れてみましょう。
つい食べ過ぎていませんか?間食の適正量と食べ方のコツ

間食を食べるときに気になるのが、適正量です。間食は心や体の健康維持に役立つとはいえ、洋菓子やスナック菓子はエネルギーのもとになる脂質や糖質が多く、食べ過ぎは肥満の原因となります。健康的に間食を楽しむためには、食事とのバランスを考えることが大切です。※6
厚生労働省と農林水産省が示す「食事バランスガイド」では、間食によく用いられる「菓子・嗜好飲料」の目安を1日200kcal程度としています。※7
200kcal程度であれば、1日の総摂取エネルギー量を大きく増やさずに間食を楽しめるでしょう。商品によって異なりますが、200kcalはおせんべい3〜4枚、板チョコレート約1/2枚、ポテトチップス約1/2袋にあたります。※8
しかし、適正量を意識していても、つい間食を食べ過ぎてしまうことがあります。適正量を守るためには、間食の食べ過ぎを防ぐ工夫も必要です。
大袋に入ったお菓子をそのまま食べると、自分が口にした量が分かりにくくなり、食べ過ぎにつながります。そのため、食べる分だけを最初にお皿などに取り分けておくとよいでしょう。また、テレビを見ながら、スマートフォンを操作しながら間食を食べることもあまりおすすめできません。「ながら食べ」を避けて食べることに集中すると、量を把握できて間食の満足度も高まります。
間食は、心身の健やかさを保ち、育むのに適しています。適正量を意識しながら、上手に間食を取り入れていきましょう。
【参考文献】
※1 厚生労働省 e-ヘルスネット「セロトニン」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-074.html
※2 厚生労働省 e-ヘルスネット「アミノ酸」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-001.html
※3 公益社団法人 日本栄養士会「栄養 Wonder BOOK 2023」
https://www.nutas.jp/84/2023/assets/pdf/theme/eiyou_wonderbook_2023.pdf
※4 厚生労働省 働く女性の心とからだの応援サイト「三大不足(栄養・睡眠・運動)とそのリスク、対策」
https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/health/column-6.html
※5 公立学校共済組合「栄養過多なのに栄養失調!?健康の基本 食生活を見直そう」
https://www.kouritu.or.jp/kokoro/column/syoku/index.html
※6 厚生労働省 e-ヘルスネット「お菓子や間食の取り入れ方」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-03-002.html
※7 農林水産省「『食事バランスガイド』の適量と料理区分」
https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/kenzensyokuseikatsu/about_b_guide.html#kubun
※8 農林水産省 子どもの食育「おやつの工夫」
https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/kodomo_navi/oneday/idea2.html
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ライタープロフィール
いしもとめぐみ
管理栄養士。一般企業勤務を経て、栄養士資格を取得。病院給食、食品メーカーの品質管理、保育園栄養士を経験。現在は、栄養・健康分野の記事執筆を中心に活動中。日本ワインとおいしいものが大好き。


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