お客様をおもてなしするとき、仕事の合間の休憩などに、お茶とともに用意するお茶請け。日本茶に合わせたお茶請けには、和菓子を用意する方も多いと思います。また、日本茶に限らず紅茶や中国茶に合う和菓子もあり、お茶の間でのひと時に和菓子は欠かせません。お茶に合う和菓子には、どのような種類があるのでしょうか。
お茶の間に欠かせないお茶請けとは
お茶を飲むときに一緒に食べるものを「お茶請け」と呼びます。お茶請けに決まりはなく、和菓子や洋菓子などの甘いお菓子のほかに、漬物のような塩気のあるものもお茶請けのひとつです。お茶請けは、お茶の味を引き立てる役割があります。※1
お茶の産地である静岡県大井川地域には、古くから伝わる「大井川のお茶請け食」があります。東海道を旅する人々が、お茶とともに味わったといわれる「朝比奈ちまき」「ほととぎす漬」「瀬戸の染飯(そめいい)」「らっか煮」が代表的な大井川のお茶請け食です。※2
朝比奈ちまきは、椿の木の灰汁(あく)に浸したもち米をついて作られたもの。灰汁に浸すことでちまきの日持ちや風味を左右するため、椿の木の灰汁が欠かせません。ほととぎす漬は、奈良漬にした白うりと和辛子を、塩漬けにしたしその葉で包んだもの。涙が出るほどの辛さが特徴で、お茶を飲み干したくなるでしょう。※3※4
瀬戸の染飯は、蒸したもち米をクチナシで黄色に染めてすりつぶし、小判型に成型したもの。現代のおにぎりのような感覚で食べられており、旅人の足腰の疲れを癒すと評判だったといわれています。らっか煮は、落花生とともに野菜やこんにゃくを煮たもの。甘しょっぱい味わいがお茶によく合います。※1※5
以上のような静岡で伝わっているお茶請けのほかにも、全国には伝統的に食べられているさまざまなお茶請けがあります。お茶請けは、お茶の間には欠かせない食べ物です。
☆平安時代に食べられていたお茶菓子についてはこちらで紹介しています。
・紫式部もお茶菓子を食べた?平安時代にも飲まれていた「お茶の起源」とは?
おもてなしにピッタリの和菓子
大切なお客様をおもてなしする際には、どのようなお茶請けを用意するのか悩んでしまうかもしれません。おもてなしの場合は、和菓子店に並ぶ季節の和菓子を用意してはいかがでしょうか。
日本では古くから、年中行事などの節目に神様や仏様にお餅を供え、お祝い事や行事に合わせた食べ物が用意されてきました。例えば、和菓子の「水無月」や「亥の子餅」などです。
水無月は6月の夏越の祓(なごしのはらえ)で用意される和菓子で、1年の残り半年の無病息災を願って食べられます。亥の子餅は11月(旧暦10月)の亥の日に万病を払う意味で食べられてきました。このような行事に合わせた和菓子は、季節を感じられるものです。用意した和菓子の由来や意味が、お客様との会話が弾むきっかけになるかもしれません。※6※7
また、味わいとともに目でも楽しめる美しい和菓子は、おもてなしにピッタリです。四季折々の風物を模して作られる「練りきり」は、こし餡と求肥を練りあげた生地で作られています。なめらかな舌ざわりで口どけが上品です。紅茶や中国茶のお茶請けとして、練りきりを用意する方もいるのではないでしょうか。※6※7
もっちりとした求肥の周りに炊いた小豆を付けた「鹿の子」は、江戸時代に人気となった和菓子。鹿の背の模様に見立てた小豆がつやつやと美しいです。小豆の風味やほんのりとした甘さがお茶の味わいを引き立てます。このほかにも「羊羹」や「最中」など、おもてなしにピッタリの和菓子は数多くあります。お客様の好みに合わせて用意すると喜ばれそうです。※6※7
☆お茶の種類に合わせた和菓子の組み合わせや、おすすめの「おもたせ」はこちらで紹介しています。
・「おもたせ」とは?悩みがちな手土産の定番は?
・緑茶、玉露、煎茶って何が違うの?季節の和菓子との組み合わせを考える
ほっと一息つきたいときの日常使いの和菓子
自分用の和菓子として、休憩時の気分転換として、気軽に和菓子を楽しみたいと感じることがあると思います。和菓子店で取り扱われているものだけでなく、スーパーマーケットやドラッグストアなどで取り扱われているお茶菓子を用意することもあるのではないでしょうか。
身近な和菓子のひとつに団子があります。甘辛いたれを付けた「みたらし団子」、ピンク・白・緑で色付けされた「三色団子」、よもぎ餅を串にさした「よもぎ団子」など、種類はさまざまです。団子は全国各地で食べられており、家庭でも作られるような身近な和菓子でもあります。※6
お祭りの屋台でも売られることがある「今川焼」は、生地の中に粒あんやこしあんを入れて焼き上げた和菓子。全国各地で食べられていますが、関西では「大判焼」「太鼓焼」、九州では「回転焼」のように、異なる名前で伝わっています。このような和菓子を食べると、お茶がいっそうおいしくなると感じる方もいるのではないでしょうか。※6
☆お茶請けにはおせんべいもおすすめです。おせんべいについてはこちらでも紹介しています。
・せんべいとおかき、あられの違い。うるち米って知っていますか?
お茶請けがお茶の味を引き立てる
現在もお茶請けとして食べられている、数多くの和菓子が作られるようになったのは江戸時代だといわれています。江戸時代に和菓子が発展した理由は主に2つです。※6※7
1つ目は、戦国時代が終わったことで国内情勢が安定したこと。砂糖の輸入量が増え、お菓子を製造する店が増えたといわれています。※6
2つ目は、茶の湯の発展とともに和菓子の種類が増えたこと。和菓子は茶席に欠かせないもので、茶人の要望とともにさまざまな種類の和菓子が作られたといわれています。特に、京都を中心として、高価な白砂糖などを使った和菓子が生まれました。茶道では、抹茶を飲む前に和菓子を食べます。これは、抹茶の味を和菓子の甘味が引き立てる役割があるからといわれています。※6※7
お茶は水分補給をする飲み物としてだけでなく、お客様をおもてなしするとき、気分を変えたいときなど、さまざまな場面で使われます。用意するお茶請けに決まりはありません。
さまざまな場面に合わせ、お茶の味を引き立てるピッタリなお茶請けを探してみてはいかがでしょうか。
☆あわせて読みたい
・「中秋の名月」十五夜はいつ?お月見の楽しみ方と月見団子のレシピ
【参考文献】
※1 茶請け
https://kotobank.jp/word/%E8%8C%B6%E8%AB%8B%E3%81%91-566598
※2 全国各地の100年フード
https://foodculture2021.go.jp/jirei/?area=tokai#jirei-contents
※3 第22回地域の伝統食「朝比奈ちまき」の再生と啓発
https://www.pref.shizuoka.jp/kensei/chiikikyoku/chubuchiiki/1004335/1052451.html
※4 幻の漬物?!『ほととぎす漬』
https://fujieda.tokaido-guide.jp/column/34?locale=zh_hans
※5 戦国時代から続く街道名物『瀬戸の染飯(せとのそめいい)』
https://fujieda.tokaido-guide.jp/column/5
※6 中山圭子(2018年)事典 和菓子の世界 岩波書店
※7 小西千鶴(2004年)知っておきたい和菓子のはなし 旭屋出版
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ライタープロフィール
はせがわ じゅん(管理栄養士)
WEBメディアで食や栄養に関わる記事の執筆のほか、レシピ開発、栄養計算を行うとともに、年間約300名以上の特定保健指導に携わっています。
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