2023.10.10

カテキンと緑茶の最新事情。30代からの健康を考えた緑茶習慣

30代になると、まだまだ元気ではあるものの将来のことを見据えて、健康的なカラダの維持を意識し始める方もいるでしょう。普段から飲んでいる飲み物も、見直してみようと考えるかもしれません。緑茶はお茶の中でも健康に良いイメージがある飲み物です。30代からの健康を考えた飲み物として、緑茶やカテキンにあらためて注目してみませんか。

海外でも注目される緑茶

ユネスコの無形文化遺産に和食が登録され、日本人の伝統的な食文化が海外でも注目されるようになりました。和食が広まってブームとなる国もあり、緑茶の人気も急激に上昇しています。
このような状況を受けて輸出量も増加し、2022年に輸出された緑茶の量は約6300トン、輸出額は約219億円でした。10年前に比べると輸出量は約2.5倍となっています。※1※2

主な輸出先はアメリカやEU、台湾です。アメリカでは緑茶の中でも特に抹茶が人気で、大手カフェチェーンでは抹茶ラテが定番のメニューになっているほどです。
抹茶の持つ健康的なイメージに魅かれて多くの人が購入しているといわれています。※1※3


☆抹茶がもたらす健康効果はこちらでも紹介しています。
千利休とマインドフルネスから学ぶ!お茶の間で自律神経を整える方法とは


では、緑茶にはどのような栄養素が含まれているのでしょうか。
摘みたての一番茶で作られる煎茶の茶葉そのものには、食物繊維のほかカルシウムに鉄、マグネシウムなどのミネラルや、ビタミンB群、ビタミンC、β-カロテン、ビタミンEなどのビタミンが含まれています。しかし、緑茶の茶葉を食べる習慣がある方は少ないかもしれません。

飲料としての煎茶には、わずかな量ですが、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルや、ビタミンB群、ビタミンCが含まれています。※4

緑茶の栄養素をより効率的に摂取したい場合は、紅茶の茶葉を使ったお菓子を食べるのと同様に、緑茶の茶葉をお菓子に使うほか、ふりかけにしたり、ハンバーグの中に混ぜ込んだりなど、さまざまな方法があります。

また、緑茶はビタミンやミネラルなどの栄養素だけでなく、お茶の味わいに関わるカテキン、テアニン、カフェインなどの作用も注目を集めており、そうした観点からもさまざまな研究が行われています。

カテキンで健康的なカラダをサポート

カテキン

緑茶に含まれているカテキンに期待されている作用には、どのようなものがあるのでしょうか。
カテキンはポリフェノールの一種で、苦みや渋みのもとになる成分です。カテキンは抗酸化作用をはじめとしたさまざまな効能を持つとされ、疾病予防にも効果を発揮する可能性が期待されています。

現在進行しているさまざまな研究や調査のひとつに、緑茶を習慣的に飲む人の死亡リスクが低下したという結果があります。
もととなる緑茶を飲む量と全死亡リスクに関わる調査は、1990年および1993年〜2011年まで、40〜69歳の男女約9万人を対象に行われました。
1日1杯未満を基準に1〜2杯、3〜4杯、5杯以上を比べると、

■緑茶を一日に飲む回数とグループの全死亡リスクに関するハザード比
・一日1〜2杯飲む場合:男性0.96/女性0.9
・一日3〜4杯飲む場合:男性0.88/女性0.87
・一日5杯以上飲む場合:男性0.87/女性0.83

と、緑茶の摂取量が増えるにしたがって低下していました。※5※6

また、緑茶抽出物が空腹時の血糖値を下げたという報告もあります。この調査は40人のアメリカ人に緑茶抽出物を含む食品を28日間摂取してもらうというものでした。結果として緑茶成分を摂取した参加者の空腹時における血糖値が低下し、腸内の炎症を減少させる効果がもたらされたことにより、緑茶に含まれている成分の人体に対する有益な関わりが期待されています。※7
他にもカテキンには抗菌作用があるとされ、緑茶抽出物でうがいをすることで口臭が抑えられたとの報告もあります。※8

以上のように、緑茶抽出物に含まれているカテキンをはじめとした生理活性物質は、健康的な体づくりのサポートに役立つ可能性があると考えられています。

30代から考える緑茶習慣

カテキン

30代ともなると責任のある仕事を任されたり、家族との時間を大切にしたり、趣味に打ち込んだりと、時間がいくらあっても足りないと感じる方もいると思います。
20代の頃に比べて疲れがとれにくいなどの変化を感じ、少しずつ健康的な体を維持することに目を向ける方もいるのではないでしょうか。
体の健康をキープしていくためには、食事の栄養バランスを整えるとともに適度な運動を行い、適正な体重を保持することと深い関わりがあるといわれています。

とはいっても、時間に余裕がないと食事や運動を見直すことは難しいかもしれません。緑茶を飲む習慣がある人の全死亡リスクが低下したことからもわかるように、緑茶に含まれている成分と健康な体の関わりには大きな期待がかかっています。健康的な体をつくるための基本は、いうまでもなく食事や運動の見直しですが、これまで飲んでいたものの一部を緑茶に替え、体調を見ながら健康サポートに取り入れるのもひとつの方法です。

緑茶は、玉露、煎茶、番茶、ほうじ茶、抹茶など、さまざまな種類があるので気分に合わせて選ぶことができます。また、今はペットボトルタイプの緑茶も種類が多く、コンビニエンスストアやドラックストアなどで手軽に手に入ります。30代からの健康づくりを考えるなら、緑茶を飲む習慣も選択肢のひとつに加えてみてはいかがでしょうか。


☆お茶にまつわる話はこちらでも紹介しています。
朝活は「朝茶」でリラックス 副交感神経がもたらす健康生活
お茶の種類は100種類以上!発酵の有無で決まるお茶の分類とは
緑茶、玉露、煎茶って何が違うの?季節の和菓子との組み合わせを考える


<参考>
※1 農林水産物品目別実績(輸出)2022 緑茶
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?stat_infid=000040047983
※2 農林水産物輸出入概況(2012年)
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?tclass=000001047240&cycle=7&year=20120
※3 「米国における抹茶流通・消費動向調査」報告書
https://www.nihon-cha.or.jp/export/pdf/180131_JTEC.pdf
※4 日本食品標準成分表(八訂)
https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_00001.html
※5 Association of green tea consumption with mortality due to all causes and major causes of death in a Japanese population: the Japan Public Health Center-based Prospective Study (JPHC Study)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25900254/
※6 緑茶摂取と全死亡・主要死因死亡との関連について(死亡リスク低減)
https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/3526.html
※7 Catechin-Rich Green Tea Extract Reduced Intestinal Inflammation and Fasting Glucose in Metabolic Syndrome and Healthy Adults: A Randomized,Controlled,Crossover Trial
https://cdn.nutrition.org/article/S2475-2991(23)20819-7/pdf
※8 歯薬療法 vol.12(3) 189「茶カテキンによる口臭および歯垢への影響」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsotp1982/12/3/12_3_189/_pdf


  • はせがわじゅん

  • ライタープロフィール
    はせがわ じゅん(管理栄養士)
    WEBメディアで食や栄養に関わる記事の執筆のほか、レシピ開発、栄養計算を行うとともに、年間約300名以上の特定保健指導に携わっています。