独特の甘さとワイルドな風味を持つ黒糖。黒糖はおいしいだけでなく、貧血予防や美肌効果、さらには血糖値の上昇を抑制する成分まで含まれているといいます。限られた地方だけで生産されている黒糖の歴史とその健康効果、簡単にできる黒糖を使ったレシピを紹介します。
黒糖と白い砂糖は何が違う?黒糖ができるまで
上白糖、三温糖、グラニュー糖、ザラメなど、日本にはさまざまな種類の砂糖があります。世界のほとんどの国では「砂糖=グラニュー糖」で、日本のように多様な砂糖がある国は珍しいのだとか。
これら砂糖の主な原料は、温かい地方で採れるサトウキビと、寒い地方で採れる甜菜(てんさい・砂糖大根)で、製造工程により色や形が異なる砂糖ができあがります。たとえば私たちが見慣れている上白糖は、甜菜やサトウキビから不純物を取り除き、結晶を取り出して作られたものです。
これに対し、黒糖はサトウキビの搾り汁を煮詰めて固めるというシンプルな方法で作られています。シンプルだからこそ、職人の腕が品質を左右するのだそう。サトウキビの目利きに始まり、収穫時期の見極め、気温・湿度によって変化させる火加減や混ぜ具合の調節など、どの工程をとっても長年の経験と技術が必要です。こうして完成する黒糖ですが、同じものは二度とできません。そのため、手作りで製造される黒糖を「できた」といわず、「生まれた」と表現する職人もいます。
日本で本格的にサトウキビ栽培と黒砂糖生産が始まったのは江戸時代。現在はおもに鹿児島県や沖縄県の離島で生産されており、島ごとに微妙に味や色が異なるため、風味の違いを楽しむことができます。※1
☆使う砂糖の種類で見た目も風味も大きく変わるかりんとうについてもご覧ください。
・かりんとうの歴史を深堀り!黒糖かりんとうと白かりんとうの違いとは
黒糖は体に良い?
ミネラル・ビタミンB群など黒糖に含まれる豊富な栄養素
砂糖の大きな特徴は「甘さ」。この甘さの正体は炭水化物の一種である「ショ糖」です。黒糖の主成分もショ糖ではあるのですが、その成分比率はなかなか個性的です。
たとえば上白糖の場合、ショ糖の割合は97%台ですが、黒糖は75〜86%と上白糖より低め。その代わり黒糖には転化糖やミネラル(無機質)などの非糖分が多く含まれており、これが黒糖独特のねっとりとしたコクの強い甘みを生み出しています。※2
また、ミネラル(無機質)の量は、カルシウムは上白糖100g中1mgに対し、黒糖には240mgも含まれています。カリウムも上白糖では2mgに対し、黒糖には1100mgも含まれています。このほかにも、黒糖にはミネラルであるナトリウムやマグネシウム、リン、鉄、亜鉛など、上白糖より多くの成分が含まれています。※1
じつはこの豊富なミネラル分が、黒糖の甘さをより強く感じさせています。スイカやあんこに塩をかけると甘さが引き立つのと同じ、「対比効果」です。
ほかにも、上白糖にはビタミンB群はほとんど含まれていないのに対し、量はわずかですが黒糖はビタミンB1やB2、B6などが含まれています。黒糖は独特の成分を持つ、栄養価の高い砂糖であるといえそうです。
血糖値の上昇を抑える効果も!?
健康と美容に役立つ黒糖成分のはたらき
黒糖に含まれる豊富な栄養成分は、体の中でどんな働きをするのでしょうか。
ご存じの通り、カルシウムは丈夫な骨や歯をつくり、筋肉の収縮や神経の安定にも関係しています。カルシウムは体内で作られないので食事などから摂取する必要があり、成人なら1日に600〜800mg摂取できれば理想的。これは牛乳ならコップ3杯、豆腐なら2丁分に相当します。カルシウムを少し補いたい場合は、黒糖を活用するのもよいかもしれません。※3
また、最も多く含まれるカリウムには、余分な塩分を排出させ、血圧上昇を抑える働きがあります。
ほかに、日本ウズラを使った実験では、黒糖には血清コレステロールおよび中性脂肪濃度を低下させ、動脈硬化の発症を抑制する作用があることがわかっており、生活習慣病の予防に効果が期待されています。※4
さらに黒糖に関する研究では、黒糖の非ショ糖成分に含まれるアミノ酸やポリフェノール類などにより、血糖値の上昇を抑制する効果や、高血圧防止、免疫増強、美白などの多様な機能性が報告されています。※5
薬膳では黒糖は体を温めて血行を良くし、胃腸の調子を整え、冷えからくる生理痛や下痢などに効果があると考えられています。※1
冷え性やお腹を壊しやすい人、便秘症の人には嬉しい食材ですね。
こうして黒糖の健康効果を知ると、黒糖が昔は貴重な「薬」として利用されていたのも納得です。といってもたくさん食べればよいというわけではなく、黒糖の理想的な摂取量は1日約50g。これは大さじ2杯、かけらなら2個程度です。ただし、カリウムが多く含まれるため腎機能が低下している人はお医者さんと相談したほうがよいかもしれません。
なお、食品表示欄に「黒糖(黒砂糖)」「純黒糖」ではなく、「加工黒糖」と表示されている商品もあります。「加工黒糖」は黒糖に粗糖や糖みつなどで風味をつけたもので、黒糖とは風味が異なります。※1
黒糖を暮らしに取り入れるには?簡単おすすめ黒糖レシピ
最後に、黒糖で作るおすすめレシピ「黒みつ」をご紹介します。作り方は、黒糖100gと水100mlを鍋に入れ、弱火で15〜20分灰汁を取りながらとろみがつくまで煮詰めます。冷えると質感が重くなるので、まだサラサラかな?というときに火を止めるのがコツです。
できあがった黒みつは、くずきりやわらび餅、パンケーキなどのシロップとして、また、豆乳やきなこと混ぜて和風ミルクセーキに、お湯割にしてショウガやシナモンを混ぜたりと使い勝手は抜群です。そのほかのお菓子作りや煮物にも使えます。
また、小さく砕いた黒糖や粉状の黒糖は、ヨーグルトやアイスにトッピングしたり、食パンにかけてシュガートーストに、といった楽しみ方もいいですね。
黒糖独特の甘さとコクを感じるには、じつはそのままかじるのが一番。沖縄や奄美群島では、お茶うけとして黒糖がそのまま出されます。特に「炊き立て」の黒糖は格別といいますから、沖縄や奄美群島に行く機会があればぜひお試しあれ。
三幸製菓の「雪の宿 黒糖みるく味」も黒糖を使っています。黒糖のコクと甘さを楽しめ、おやつにもぴったりです。ぜひお楽しみください。
雪の宿 黒糖みるく味
https://www.sanko-seika.co.jp/product/item/5074/
☆おせんべいはよく噛んで食べることで、健康効果も期待できます。詳しくはこちらをご覧ください。
・咀嚼で増える?マイオカインという幸せホルモンに似た物質の正体とは
【参考文献】
※1 沖縄県黒砂糖共同組合・沖縄県黒砂糖工業会
https://www.okinawa-kurozatou.or.jp/story/p3
※2 独立行政法人農畜産業振興機構「お砂糖豆知識[2000年1月]」
https://sugar.alic.go.jp/tisiki/ti_0001.htm
※3 農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/minna_navi/topics/topics1_05.html
※4 独立行政法人農畜産業振興機構「8つの島の沖縄黒糖」
https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_000996.html
※5 独立行政法人農畜産業振興機構「黒糖利用に関する研究の現状と課題」
https://www.alic.go.jp/content/001188204.pdf
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ライタープロフィール
澤 晶子(サワ アキコ)
WEB編集者・ライター
長年、学習塾・家庭教師勤務。フレンチ・イタリアンレストランでの勤務経験も豊富。趣味は食べ歩きと料理。季節のグルメのお取り寄せにも目がなく、特に地方限定銘菓が大好きです。
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