2024.05.07

新茶とは?「八十八夜に摘み採られたお茶を飲むと長生きする」って本当?

冬に養分を蓄えた茶の木(チャノキ)は春になると芽がふくらみ始めます。その新芽を摘み採って加工したものを「新茶」といいます。※1 収穫がおこなわれる5月初旬は八十八夜にあたることから、古来より「八十八夜に摘み採られるお茶は縁起がよい」とされてきました。新茶の魅力や縁起がよいとされる理由、そして新茶をよりおいしく飲むいれ方についてご紹介します。

新茶のおいしさの秘密とは 新茶とほかのお茶は何が違う? 

ツバキの仲間である「チャノキ」という植物の葉を摘み採り、加工して作られるお茶のひとつに緑茶があります。緑茶は春から秋にかけて、年4回ほど収穫期があり、収穫の時期によって味わいが変わります。特に年の最初(春)に収穫されるやわらかな新芽を使った新茶は一番茶ともいわれ、香りや味わいが格別です。フレッシュで清々しい印象を与える青葉の香りは、新茶特有の魅力といえます。

一般的な緑茶の味わいには、甘みや苦み、渋みが調和した奥深さがありますが、新茶は苦みや渋みは控えめで、しっかりした旨味や甘みを感じられるのが特長です。

この違いは、緑茶に含まれるうま味成分であるテアニン(アミノ酸の一種)と、苦みや渋みのもとであるカテキン(ポリフェノールの一種)の含有量の違いにあります。

うま味成分であるテアニンは秋冬に蓄えられます。そのため、最初に収穫時期を迎える新芽にはテアニンがもっとも多く含まれます。このテアニンは収穫を経るごとに減っていく傾向にありますが、一方で苦みや渋みのもとであるカテキンは増えていきます。※2

新茶にはうま味成分のテアニンが多く含まれ、苦みや渋みのもとであるカテキンが少ないことが新茶特有のおいしさの理由なのですね。

新茶に豊富!心の健康に役立つお茶の成分「テアニン」とは

新茶

お茶に含まれるうま味成分のテアニンは、新茶のおいしさを支えるだけでなく、私たちの心の健康にも影響を与えることがわかっています。緑茶を飲むとほっと心が落ち着く感覚を覚える人は多いでしょう。

じつはその感覚にはきちんと理由があり、テアニンには不安を和らげるリラックス作用をはじめ、ストレス軽減作用、睡眠の質の改善に役立つことが研究で明らかになっています。※3

心を健やかに保ち、良質な眠りをサポートすることで知られるテアニン。おいしい新茶を飲みながらテアニンを摂取することで、くつろぎの時間が持てそうですね。

新茶の時期はいつ?
八十八夜に摘む新茶に不老長寿の願いを込めて

新茶

日本には古くから使われている「二十四節気」という暦があります。二十四節気とは、一年を24の季節に分けたもの。その季節のひとつである立春から数えて88日目に当たる日を「八十八夜」といいます。※4
新茶の時期は4月下旬から5月初旬ですが、なかでも八十八夜に摘み採られた新茶は、不老長寿が叶う縁起のいいものとして古来より特別に扱われてきました。

「八十八夜」の字には、末広がりの「八」の字がふたつも使われています。ほかにも日本人の主食である「米」の字を分解すると「八十八」になることから、八十八夜は縁起がいいとされてきました。

そして初物好きな日本人の文化も影響します。初物とはその季節にはじめて出回る食材のこと。日本人には古くから初物を尊ぶ意識があり「初物を食べると七十五日長生きできる」という言い伝えも残っています。

これらの風習が重なった結果、八十八夜に摘み採られる新茶は縁起のいいものとして、いつしか重宝されるようになったのです。たしかに爽やかな香りを放つ新茶を飲むと、新芽の溢れんばかりの生気を分けてもらえるような気がします。健康に長生きできるよう願いを込めながら、新茶を飲むのもいいかもしれませんね。

新茶のおいしいいれ方とは 新茶の魅力を引き出そう!

新茶

新茶をよりおいしく飲むなら、いれ方にこだわりましょう。お茶をいれる際にいくつかのポイントを押さえるだけで、新茶の魅力がより際立ちます。ここからは、おいしさを引き出す新茶のいれ方をご紹介します。

爽やかな芳香は、新茶の魅力のひとつですね。新茶の香りを楽しむには、温度を高めにした湯を使うことがポイントです。一般的な煎茶では70℃程度の湯を使いますが、新茶はやや高めの80℃程度の湯でいれましょう。沸かした湯を一度湯呑みに移し、それから急須に注ぐと、ちょうど新茶の適温になりますよ。

また、蒸らし時間を若干短くすることもポイントです。煎茶は1分ほど蒸らす一方、新茶は40秒ほどでかまいません。やや高温の湯であまり時間をかけずに抽出すると、立ち上る湯気とともに新茶特有のフレッシュな香りが広がるはずです。

反対に、少し低めの温度で時間をかけていれると、テアニンがしっかり抽出されて旨味を強く感じるでしょう。おいしいいれ方のコツを押さえて、新茶を満喫してくださいね。

リラックス効果のある新茶は、くつろぎの時間のお供にぴったりです。この時期ならではの端午の節句の柏餅や、香ばしいおせんべいと一緒に新茶の豊かな香りを楽しんでみてはいかがでしょうか。

☆お茶と和菓子についてはこちらもご覧ください。
朝活は「朝茶」でリラックス 副交感神経がもたらす健康生活
緑茶、玉露、煎茶って何が違うの?季節の和菓子との組み合わせを考える

【参考文献】
※1 東京都茶協同組合
https://tokyo-cha.or.jp/article/new-year-of-tea-2022.html
※2 JA静岡 お茶の豆知識
https://ja-shizuokashi.or.jp/speciality/green-tea/knowledge
※3 公益社団法人日本茶業中央会「茶の健康効果20選」
https://www.nihon-cha.or.jp/pdf/health_benefits20.pdf
※4 国立国会図書館 日本の暦「二十四節気(にじゅうしせっき)」
https://www.ndl.go.jp/koyomi/chapter3/s7.html

  • いしもとめぐみ

  • ライタープロフィール
    いしもとめぐみ
    管理栄養士。一般企業勤務を経て、栄養士資格を取得。病院給食、食品メーカーの品質管理、保育園栄養士を経験。現在は、栄養・健康分野の記事執筆を中心に活動中。日本ワインとおいしいものが大好き。