見た目の華やかさと甘美な味わいで、私たちの心も楽しませてくれる甘いお菓子たち。「スイーツ」や「デザート」のほかに、最近では「ドルチェ」とも呼ばれるようになりましたが、これらの呼び方にはどのような違いがあるのでしょうか?
それぞれの言葉の意味や歴史、そして本場・イタリアで愛されているさまざまなドルチェもご紹介します。
イタリア語のドルチェとは?東西交易と温暖な気候が育んだ豊かなお菓子文化
「ドルチェ」とは、「甘い」「やわらかい」「やさしい」という意味を持つイタリア語です。イタリア語がルーツといわれているラテン語の「dulcis(甘美な・甘い)」に由来しており、料理用語としてはチョコレートやケーキなどのお菓子はもちろん、はちみつやジャムなど甘い食べ物一般を指して使われます。
イタリアは海外貿易の拠点として、古くから東西さまざまな国との交易が盛んでした。新しい食材や技術もどんどん取り入れられ、食文化・料理文化がいちはやく発展した国です。イタリア料理のルーツは古代ローマにまで遡るのだとか。代表的な西洋料理のひとつフレンチ(フランス料理)も、実はイタリア料理がルーツなのだそうです。※1
また地中海に面し、温暖な気候のイタリアは、海産物や果物など食材も豊かです。さらに南北に長い地形により、それぞれの地方独特のお酒や果物なども生まれました。こうした新鮮で豊富な素材を活用したさまざまな料理やドルチェがイタリアの食文化として発展し今日へと伝わっているのです。
スイーツ、デザートとドルチェはどう違う?意味の違いから文化の違いを知る
日本ではドルチェ以外にも、お菓子を指す言葉として「スイーツ」や「デザート」などが使われています。これらの言葉にはどのような違いがあるのでしょうか?
まず「デザート(英語:dessert)」は、フランス語の「デセール(dessert)」という単語がもとになっています。元来の意味は「食事を引き上げる・片付ける」、つまりすべての食事を終えたあとに出てくるものを指していました。
一方、スイーツ(英語:sweets)は、英語の「スイート(甘い)」から。主にキャンディやプリンなど砂糖をたっぷり使った糖分の高いお菓子を指す言葉ですが、日本では1990年代後半から有名店の高級菓子を指して使われるようになり、それが次第に一般化されて、甘いお菓子全般をスイーツと呼ぶようになりました。つまり同じお菓子でも食後に出されればデザート、それ以外の時間ならスイーツというわけです。※2
ちなみに食後に甘いデザートを食べる習慣には、お肉や魚などの主菜を中心とする西洋の食文化が関係しているようです。主食のお米を中心とし味付けに砂糖やみりんもよく使われる日本料理と違い、お肉や魚などのタンパク質が中心で甘い調味料もあまり使われない西洋料理では糖質が不足しがち。
そこで砂糖を使ったお菓子をコースの最後に食べることで栄養のバランスを取り、しかも食事の満足感を上げることができるのです。
本場イタリアの代表的なドルチェは?超定番から、最先端のあのお菓子まで
ドルチェの本場・イタリアでは、どんなお菓子が人気なのでしょうか。一番有名なイタリアンドルチェといえば、やはりティラミスでしょう。北イタリアで誕生したティラミスは、マスカルポーネチーズとエスプレッソを使った、ほろ苦くクリーミーなドルチェです。日本でも1990年代、社会現象になるほどブームになりました。その後さまざまなアレンジが加えられたり、現在でもコンビニスイーツとして定着しています。
生クリームをゼラチンで固めたパンナコッタや、近年、そのビジュアルでインパクトを与えたやわらかい生地にたっぷりのクリームを挟んだマリトッツォも、代表的なイタリアンドルチェです。また、氷菓・ジェラートも、イタリア生まれの定番ドルチェ。一般的なアイスクリームより空気量が少なく、そのため濃厚でクリーミーな味わいが特長です。
さらに、カットすると美しい断面を見せるドーム型のズコット(ズッコット)や、リコッタチーズやカスタードクリームを入れたパイ状のスフォリアテッラも、知る人ぞ知るイタリアンドルチェ。ケーキ屋さんやイタリアンレストランで見かけたら、ぜひ一度オーダーしてみては。
生活に欠かせないドルチェ―音楽用語に口説き文句、時計のネーミングにも!?
イタリアのドルチェはお菓子だけではありません。音楽用語でドルチェは「甘美な・やわらかく」という意味を持ちます。楽器で「フラウト・ドルチェ(Flauto Dolce)」といえば、甘く柔らかい音色を持つ縦笛、つまりリコーダーのことです。
またドルチェはハイブランドの香水や時計、さらには高級車のネーミングにも使用されてきました。英語で恋人に「Sweet heart」と呼びかける言葉があるように、女性を口説いたり、愛情を表現したりするときにもドルチェというワードは活躍します。
フェデリコ・フェリーニ監督の有名な映画「ドルチェ・ヴィータ(La Dolce Vita)」は、イタリアのセレブたちの甘く刹那的な日々を描いた名作です。さらにイタリア人がたびたび口にする、「ドルチェ・ファール ニエンテ(Dolce far niente)」というフレーズは、「甘美なる無為」、つまり何もせずのんびりした快い時間を表します。忙しい日本人にとって「何もしない時間」は、最高に贅沢で甘いひとときといえるかもしれません。
日本では近年、ティラミス味のクッキーなど、本場のドルチェを日持ちのする焼き菓子として再現した商品を見かけるようになりました。手軽に味わえる日本ならではの新・ドルチェで、のんびりした甘美なる時間を楽しんでみてはいかがでしょう。
☆おせんべいを使ってドルチェをご家庭で楽しみましょう。ぜひこちらもご覧ください。
・おせんべいの絶品アレンジレシピ トッピングや味変で広がる楽しみ方
【参考文献】
※1 京都調理師専門学校
https://www.kyoto-chorishi.ac.jp/blog/18175/
※2 日本菓子専門学校
https://www.nihon-kashi.ac.jp/campuslife/blog/1021/
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ライタープロフィール
澤 晶子(サワ アキコ)
WEB編集者・ライター
長年、学習塾・家庭教師勤務。フレンチ・イタリアンレストランでの勤務経験も豊富。趣味は食べ歩きと料理。季節のグルメのお取り寄せにも目がなく、特に地方限定銘菓が大好きです。
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