2024.09.02

かりんとうの歴史を深堀り!黒糖かりんとうと白かりんとうの違いとは

かりんとうはどこか懐かしさを感じさせる、昔ながらの和菓子のひとつです。古くからあるかりんとうですが、他の日本の伝統的な和菓子の作り方とはずいぶん異なります。かりんとうはどこからやって来て、どのように進化してきたのでしょうか。
どこかかわいらしい響きを持つお菓子の名前の由来と歴史、人気の秘密を探ります。

かりんとうの名前の由来は?漢字で書くと花梨糖、火輪糖、カリン糖?

かりんとうは小麦粉と砂糖を練って油で揚げ、砂糖で作った蜜をからめた昔ながらのお菓子です。お店などでよく見かける太いかりんとうは、カリッと揚げるのが意外と難しく、高度な技術が必要なのだとか。現在は定番の黒糖かりんとうのほかにも、味や形などさまざまな種類を楽しむことができます。

「かりんとう」と名付けられた由来にはいくつかの説があり、そのひとつは「食べたときにカリカリという音がするから」というものです。食感をそのまま名前にした、かわいらしいネーミングですよね。

また、九州では縄状のかりんとうのことを「オランダ」と呼んでいる地域もあるそうで、「黒船から名付けられた」という説もあります。その頃、蒸気で動く船は「火輪船(かりんせん)」と呼ばれており、伝統的な和菓子に慣れていた人々にとって油で揚げた甘いかりんとうは、黒船のように目新しく新鮮に映ったのかもしれません。

さらに、「花梨(カリン)の木や熟した花梨の実に似ているから」という説もあります。花梨の木といえば、花梨瘤といわれるたくさんのコブによる木目が特徴です。そういわれてみれば、かりんとうの表面にあるデコボコは、複雑な木目を持つ花梨の木に似ているようにも見えますね。※1

かりんとうの歴史 黒糖かりんとうの誕生はいつ?

さて、かりんとうはいつ誕生したのでしょうか。実ははっきりとした時代はわかっていません。よくいわれているのは、聖徳太子の時代、遣唐使によって中国から伝わった小麦粉を練って揚げた「唐菓子」が、かりんとうの起源という説です。

かりんとうはたくさん砂糖を使うお菓子なので、砂糖が貴重品だった頃には上流階級の食べ物でした。一般の人々がかりんとうを食べられるようになったのは江戸時代になってからといわれています。その後、明治8年になって浅草仲見世のある店が黒糖を使ったかりんとうを売り出し、全国に広がっていったといわれています。

当時、白砂糖はまだまだ高価だったため黒糖が使われたわけですが、黒糖に含まれる「コクトオリゴ」には酸化を抑制する働きがあります。揚げ物は時間が経つとどうしても油が酸化してしまいがちですが、黒糖を使った黒かりんとうは日持ちもよく、今のように保存技術がない時代でもおいしさをキープできたのでしょう。※1

黒かりんとうに白かりんとう かりんとう東西事情

かりんとう

かりんとうは大きく分けると「黒かりんとう(黒糖かりんとう)」と「白かりんとう」に分けられます。材料や作り方はほぼ同じですが、揚げた後に黒糖で作られた蜜をかけるか白砂糖で作られた蜜をかけるかという違いによって、見た目も風味も大きく変わります。

また同じ黒かりんとうでも、関東では生地をしっかり発酵させ空気を含ませてふっくら揚げたソフトな食感のかりんとうが多いのに対し、関西では生地を強くこねてじっくり揚げたハードな食感のかりんとうが多いようです。その理由として、関東では黒砂糖を味わうことを重視し、関西では保存を重視したからと考えられています。※2

なお、揚げ菓子というとドーナツが思い浮かびますが、かりんとうとドーナツの違いは生地に卵が入っているかいないかです。卵が入ることでドーナツはふんわりと仕上がり、かりんとうは締まった生地に仕上がります。

海外に目を向けると、イタリアの「キアッケレ」など、世界にはかりんとうとよく似たお菓子がいくつかあります。特にスペインの「ペスティーニョ」は「スペインのかりんとう」と呼ばれるほど、見た目も作り方もかりんとうにそっくりです。「ペスティーニョ」は仕上げに砂糖ではなくはちみつをたっぷりかける、クリスマスやイースターなど特別な日に欠かせないお菓子だそうです。

かりんとう饅頭にかりんとうドーナツまで!進化を続けるかりんとう菓子

かりんとう

長い歴史のなかで、かりんとうはさまざまな形に進化しています。最近では、野菜が練り込まれたカラフルなかりんとうや、ピーナツやゴマ、味噌で味付けしたかりんとうなども登場しています。

ほかにもかりんとうの名を借りた、似て非なるお菓子も登場しています。例えば、ドーナツやあられに蜜をかけた「かりんとうドーナツ」や、「かりんとうあられ」です。揚げ菓子に黒糖の蜜をかけて「かりんとう」と謳っているものや、揚げずに焼いた「焼きかりんとう」なるものまで登場しています。

そのなかでも、20数年前に誕生し今でも人気のあるお菓子が「かりんとう饅頭」です。かりんとう饅頭は黒糖を練りこんだ生地でこしあんを包み、油で揚げた饅頭です。揚げたてのかりんとう饅頭は表面のカリっとした食感と風味がかりんとうに似ていることから、この名がつけられたそうです。

かりんとうのおいしさはもちろんですが、健康への意識の高まりから栄養価の高い黒糖が注目されていることも、かりんとうに根強い人気がある理由のひとつかもしれません。今後、さらに変わったかりんとうの登場も期待されますが、手にする機会があればぜひ手にとってみてはいかがでしょうか。※3

☆黒糖の健康効果についてはこちらで紹介しています。
黒糖と白砂糖の違いとは?ミネラル豊富な黒糖と血糖値の関係

☆ロングセラー「雪の宿」やおしゃれなひとくちサイズのかりんとうも!
三幸製菓のかりんとう商品についてはこちらをご覧ください。

【参考文献】
※1 独立行政法人 農畜産業振興機構
https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_000051.html
※2 日経新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXNASIH03008_T00C14A4AA1P00/
※3 内閣府
https://www8.cao.go.jp/okinawa/8/2023/okinawahukki50/content/industry02.html

  • 澤 晶子

  • ライタープロフィール
    澤 晶子(サワ アキコ)
    WEB編集者・ライター
    長年、学習塾・家庭教師勤務。フレンチ・イタリアンレストランでの勤務経験も豊富。趣味は食べ歩きと料理。季節のグルメのお取り寄せにも目がなく、特に地方限定銘菓が大好きです。