お呼ばれしたときの手土産は、相手に喜んでもらえるお菓子を選びたいですよね。近年、手土産のことを「おもたせ」と呼ぶ場面をよく目にしますが、本来の「おもたせ」の使い方とは少し異なります。今回は「おもたせ」の意味と、手土産を渡す際の基本的なマナー、そして定番となるお菓子の条件についてご紹介します。誰にでも喜ばれるお菓子を持参して、楽しいひとときを過ごしてみませんか。
「おもたせ」とは?
基本的な手土産のマナー&うっかりやりがちなNGとは
最近、雑誌やオンラインショップなどで「おもたせ○選」や「おもたせにぴったり」など、手土産と同じ意味で「おもたせ」と紹介しているのを見かけますが、じつは「おもたせ」の本来の意味から変化した用法です。
手土産とは訪問する際に持参するお土産のことを指します。それに対し、おもたせとは「御持たせ(給ふ)物」の略で「お客様が持ってきてくださった物」という意味があり、頂いた側が感謝の気持ちを込めて使う言葉です。このような違いがあることから、持参した側なのにうっかり「これ、おもたせですが…」といってお渡ししないように気をつけましょう。※1
おもたせの使い方が混在しているのには、昔と今では手土産に対する捉え方が変わってきたことがうかがえます。以前はお客様から手土産を受け取ると、まずは仏壇や神棚などにお供えし、お客様の前で開けるのは失礼とされてきました。お供えし、お客様が帰られてから家族で楽しむという方も多かったのではないでしょうか。そのため、頂いた手土産をお客様と一緒に食べる場面では恐縮さを表すため「おもたせで失礼ですが…」という表現が用いられたと考えられます。
しかし、最近では「おいしいものを一緒に食べながら、楽しい時間を共有しましょう」という考えから、「おもたせ」として出される前提で手土産を持っていく機会が増えたため、手土産を取り扱うサイトや記事の中であえて「おもたせ」と使っているようです。
「おもたせ」、つまり手土産の受け渡しには基本的なマナーがあります。たとえば、渡すタイミング。玄関先ですぐに渡すと相手を急かしているように思われるので、部屋に通されてからお渡ししましょう。それまでに手提げ袋や風呂敷から出しておき、相手に渡す際は正面が相手側に向くように渡すと好印象です。例外として、アイスクリームなどはできるだけ早く渡します。
手土産を受け取った側がお客様にお出しする場合は、お茶と一緒にお出ししましょう。そのときに添えるのが「おもたせで失礼ですが…」の一言です。頂き物をその場で開けることをためらう人もいるかもしれませんが問題ありません。
人気の「おもたせ」は?場を盛り上げるおすすめ手土産の条件
さて、手土産にはどんなものを選べば喜ばれるでしょうか。相手の好みに合わせるのがベストですが、好みがわからない場合は、癖のあるものやお酒などは避けるのが無難です。
手土産の相場は3,000〜5,000円程度。目上の方には有名ブランドや高級感のあるパッケージに入った和菓子、カジュアルな集まりであれば話題の新商品や華やかで目をひくお菓子などがおすすめです。ご家族がいるようなら少し多めに持って行くと、あとで楽しんでもらえます。
切り分けが面倒なものはホストを長時間離席させることになるため、取り出してそのまま食べられるものがよいかもしれません。日持ちするもの、個装されたものなら残っても安心です。ところで手土産には熨斗は必要でしょうか。親しい間柄なら不要ですが、掛けるなら「御挨拶・御礼」が一般的です。
何を持っていくにしても気をつけたいのは、相手のお家近くの店で購入しないこと。たとえそれが有名店であったとしても、間に合わせで購入したような印象を与えます。また、4個(死)・9個(苦)入りは避けるのが無難とされています。
定番中の定番!手土産におせんべいをおすすめしたい理由
一見地味に思えるかもしれませんが、おせんべいもおすすめです。手土産にあえておせんべいを推す理由として、まず、世代に関係なく日本人にとっておせんべいの味は馴染みがある、という点が挙げられます。そして、じつは外国人にとっても甘辛いお醤油味の「Rice cracker」は抵抗感がありません。ハズレがないというのは大きいですよね。
おせんべいは食べるときによく噛むので、満腹感が得られやすいうえに消化・吸収がよく胃もたれしません。炭水化物にタンパク質・脂質・ミネラル・ビタミンなども含まれており、栄養価が高いというメリットもあります。さらに、おせんべいは砂糖やバターをたくさん使用したお菓子よりも低カロリーです。
また、おせんべいの多くはグルテンフリーです。小麦アレルギーがある方やダイエットを目的として小麦を使わないグルテンフリーの食品を選ぶ人が増えていますが、お米が原料のおせんべいなら安心しておすすめできます(商品によっては原材料以外に小麦粉やアレルギー症状を引き起こす物質が含まれている可能性もあるため、各商品の表示をご確認ください)。※2
おせんべいは種類も豊富で日持ちもし、個装されている商品が多いのも特長です。相手やシーンに合わせて選ぶことができ、持ち運ぶ途中で形が崩れる心配もありません。定番中の定番だからこそ、センスのよさを発揮してみませんか。
☆手土産に喜ばれるお菓子にまつわる話はこちらでも紹介しています。
・せんべいとおかき、あられの違い。うるち米って知っていますか?
・お茶請けとは?ピッタリな和菓子の種類は?知っておきたい「お茶請け」の基本
・和菓子の日とは?和菓子の日の歴史と厄除けと招福の関係
手土産で一番大事なこととは?
手土産に何を選ぶかでセンスやマナーが問われる場合もありますが、それよりも相手を思いやり、おもてなしに感謝する気持ちが大切です。お菓子の数や値段だけに気を取られるよりも、相手の顔を思い出し、好みを一生懸命考えて選ぶとよいでしょう。
また、贈るときに言い添える「つまらないものですが」は、慎みや謙虚さを感じる奥ゆかしい表現ではありますが、最近は持参する側・頂戴する側ともにこの表現をあまり好まない傾向にあります。取引先に対するお詫びの手土産ならともかく、親しい間柄の方には「〇〇がお好きと聞いたので」「とてもおいしかったので」といい換えるなど、TPOに応じて使い分けてみてはいかがしょうか。
相手を思いやりながら一生懸命選んだ手土産は、楽しい時間をさらに盛り上げてくれる、思い出に残るひと時を演出してくれるでしょう。
【参考文献】
※1 NHK「ことば 言葉 コトバ」
https://www.nhk.or.jp/bunken/research/kotoba/pdf/20220201_7.pdf
※2 全国米菓工業組合
https://www.arare-osenbei.jp/appeal/
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ライタープロフィール
澤 晶子(サワ アキコ)
WEB編集者・ライター
長年、学習塾・家庭教師勤務。フレンチ・イタリアンレストランでの勤務経験も豊富。趣味は食べ歩きと料理。季節のグルメのお取り寄せにも目がなく、特に地方限定銘菓が大好きです。
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