2025.11.04

せんべいとおかき、あられの違い。うるち米って知ってますか?

せんべい・おかき・あられはいずれも米を材料に使ったお菓子です。米菓というカテゴリの中でも、原材料や製法の違いによって形や食感にはさまざまな特徴があり、これらの呼び名が付けられています。米菓の主な原材料には「うるち米」と「もち米」がありますが、うるち米とはどのような米で、もち米とはどのように違うのでしょうか。
今回は、日本でなじみ深い米菓と、その原料である米の特徴を解説します。それぞれの米の特徴を知ると、せんべい・おかき・あられ、さらにその他の米菓の個性も見えてくるでしょう。

せんべいとおかき、あられはどう違う?

おせんべいおかき

せんべい・おかき・あられは、古くから食べられているなじみ深いお菓子です。これらのお菓子は色や食感が似ていますが、何が違うのだろうと思ったことはありませんか。

せんべい・おかき・あられの違いのひとつは見た目です。せんべいは多くが平らな円形で、おかきとあられはぷっくりと膨らんだ形をしています。なお、おかきとあられの違いは大きさにあり、5cm以上のものをおかき、それより小さいものをあられと分類することが多いようです。※1※2

3種類とも米を使って作られるお菓子ではあるものの、せんべいはうるち米、おかきやあられはもち米が使われるのが主流です。

うるち米とは、炊飯し主食として日常に広く食べられている「ごはん」の米です。有名な品種としてはコシヒカリやあきたこまち、ひとめぼれなどがあり、農林水産省によるとうるち米の銘柄は国内で934もの登録があるそう。一方、もち米とは、餅やおこわに使われる米のことで、137銘柄が登録されています(2024年時点)。※3

この原材料の違いが、せんべい・あられ・おかきの見た目や食感に大きく関わっているのです。

うるち米ともち米、白米と玄米 それぞれの特徴と違いとは

おせんべいおかき

うるち米ともち米はいずれも「稲」で、見た目も似ていますが加熱後の食感に違いがあります。これには、米の主成分であるデンプンが大きく関わっています。

デンプンはブドウ糖がつながってできたもので、アミロースとアミロペクチンという2つの成分から構成されています。アミロースはブドウ糖が直線的に1,000個ほどつながったもので、アミロペクチンは枝分かれしながら10,000個ほどつながったものです。このアミロースとアミロペクチンの割合によって米の粘り強さに違いが現れ、アミロースの含量が多いほどさっぱりした食味に、アミロペクチンの含量が多いほど粘りが強く感じられます。※4

ほぼ100%がアミロペクチンで構成されていて粘りが強い米が「もち米」、約80%のアミロペクチンと約20%のアミロースとで構成されていてさっぱりとした食味の米が「うるち米」と分類されており、このため、どのような場面でも比較的食べやすい食感のうるち米が、日常的な主食の「ごはん」として適しているというわけです。※5

なお、うるち米ともち米は米の性質による分け方ですが、これらの米を収穫して外側の皮(もみがら)を取り除いた状態の米は「玄米」、さらに玄米から胚芽や糠(ぬか)をすべて取り除いた状態の米は「白米(精白米)」と分類されています。※6

一般的な主食の「ごはん」に使われるのは、うるち米の白米です。しかし、ビタミン、ミネラルなどの栄養素が多く含まれる胚芽や糠を除去していない「うるち米の玄米」や「もち米の玄米」、一部を除去せず残した「分づき米」を食生活に取り入れる方も少なくありません。

うるち米・もち米で作られる米菓の違い

おせんべいおかき

米は主食となるだけでなく、お菓子の材料にも使われているのはご存じの通りです。もち米とうるち米の違いは、それぞれの米で作られるお菓子の食感や風味を左右します。

おかきとあられはもち米を主材料に作られており、焼いた餅がぷくっと膨らむのと同様、焼き上げるときに大きく膨らみます。このもち米の白米を粉にすると「白玉粉」や「もち粉」になります。これらの粉を使ったお菓子には白玉団子や求肥、大福などがあり、もちもちした食感や粘りがあって伸びる特徴を持っています。

☆もち米で作るけどもちじゃない、時間がたってもやわらかい求肥や羽二重餅についてはこちらもぜひご覧ください。
求肥(ぎゅうひ)って何?和菓子作りに大活躍!おもち、白玉、すあまとの違いって?
伝統菓子「羽二重餅」とは?求肥とどう違う?名前の由来は高級絹織物「羽二重」

一方、せんべいは粘りが控えめなうるち米で作られているので、焼いたときに膨らみが少なく、平べったい形になります。このうるち米の白米を粉にしたものが「上新粉」で、上新粉を使ったお菓子には団子や草餅、柏餅などがあります。どのお菓子も多少のもっちり感はあるものの、もち米や、もち米を粉にした白玉粉を使って作ったお菓子ほどの伸びはありません。噛み切りやすく、歯切れの良い食感が特徴です。

なお上新粉も白玉粉も、どちらも精米された白米から作られていますが、精米前の玄米や玄米粉をお菓子作りに使うことも可能です。もち米の玄米を使った玄米餅は独特の香ばしい香りが魅力ですし、うるち米の玄米粉を使ったケーキやクッキーはふわふわもっちりした食感が楽しめます。

せんべいとおかき、あられは製造方法にも違いが

使っている米の種類が異なるせんべいと、おかき・あられですが、製造工程にも違いがあります。

おせんべいおかき

まず、せんべいはうるち米を粉にして熱湯で練り、蒸して薄く伸ばします。型抜きしたのち乾燥させていったん寝かせ、さらに乾燥して焼成、最後に味付けをします。生地は寝かせることで内部と外部の水分量が同じになり、焼き上がりや食感を整えることができます。※7

おせんべいおかき

一方、あられ・おかきは、水に漬けておいたもち米をそのまま、または粉状にしてから蒸して餅を作ります。これを成形して冷やし固め、固まったら適度な大きさに切って乾燥させ、寝かせて水分を均一にします。乾燥と寝かせを繰り返し、最後に焼いて味付けをしたら完成です。
米に含まれているデンプンの種類や量、寝かせる日数や乾燥具合などが出来上がりに影響を与えるため、製品によって工程は様々です。しかし、あられ・おかきはせんべいより工程も多く、完成までの時間が長くなるのが一般的です。

せんべい・あられ・おかきは使う米に合わせ、その特徴を活かせる製造方法で作られているのですね。

種類はさまざま!せんべい・おかき・あられの魅力

おせんべいおかき

せんべい・おかき・あられはさまざまな食感や味付けのものがあり、バラエティに富んでいます。例えば、せんべいには厚焼きせんべいや薄焼きせんべい、堅焼きせんべい、ぬれせんべい、揚げせんべいなど仕上がりの異なる種類があります。

厚焼きせんべいは、バリッとした硬い歯触りが特徴で、厚みがありごつごつとした形をしています。ぬれせんべいは、焼きたての熱いせんべいを醤油に漬けたしっとりした食感が特徴で、千葉県銚子市の名物としても知られています。揚げせんべいは、せんべいの生地を油で揚げたもので、サクッとした軽い食感とコクのある味わいがあります。

味付けは塩や醤油はもちろん、砂糖をまぶしたもの、海苔で巻いたもの、エビやゴマ、明太子入りなどさまざまなせんべいが作られています。もちろん、草加せんべいのように昔から愛されているご当地せんべいも健在です。

おかきやあられもバリエーションは豊富ですが、なかでも有名なものには「柿の種」があります。名前の通り、柿の種そっくりの細長い楕円形をしたあられで、醤油味に唐辛子をピリッと効かせたものが定番です。最近はチョコレートでコーティングしたものや、ワサビ味に梅味と豊富な種類があり、新作を見かけた際には思わず手に取ってしまう人も多いかもしれませんね。

原材料が米なだけに、どのような素材と合わせてもマッチしやすく、飽きのこない味わいが米菓の魅力なのです。

☆おせんべいには、米のほかに小麦を原料とした有名なおせんべいもあります。詳しくはこちらをご覧ください。
草加せんべいと南部せんべい なにが違う?お米と小麦で変わるおせんべいのルーツとは

あられにも地域性が?
せんべい・おかき・あられの東西トリビア

おせんべいおかき

古くから保存食として、また神事にも用いられていたともいわれる米菓は日本各地で受け継がれながら形や味を変えて多様化していきました。

あられも地域によって味付けや形が異なるのもあり、その代表的なものに雛あられがあります。関東の雛あられはうるち米を煎って爆ぜさせたポン菓子に砂糖で味を付けたもので、関西の雛あられはもち米から作った餅を小さく砕いて焼いた、文字通りの「小さなあられ」です。さらにマヨネーズ味のような一風変わった味わいの商品が定着している地域もあるようです。※8

ところで、せんべい・おかき・あられのネーミングの由来をご存じでしょうか。実はこのネーミングにも東西の歴史が反映されています。鏡餅などを欠き砕いて作られた「欠き餅」を京の宮廷の女房たちが丁寧語の「お」をつけて呼び、広まったとされるのが「おかき」です。また「あられ」の由来は、見た目や焼くときに跳ねる音が空から降る霰(アラレ)に似ていたからといわれていますが、もとは宮廷で海外からの賓客をおもてなしするために作られたお菓子でした。どちらも京の風情を感じさせる西日本発のネーミングです。

一方、せんべいは醤油の生産が盛んな関東でまず普及し始めました。ネーミングについては草加の茶屋で働いていた「お仙」という女性が売っていたことから、など楽しいエピソードがいくつもあります。※9

普段あまり意識していなくても、自分の住んでいる地域のせんべい・おかき・あられがあるかもしれません。ご当地米菓を探してみるのも楽しいかもしれませんね。

米菓をおいしく食べられる期間は長い

おせんべい

お菓子にはおいしく食べられる賞味期限がありますが、せんべい・あられ・おかきの米菓は含まれている水分が少ないので腐敗しにくく、比較的賞味期限の長いお菓子です。

米菓の種類などさまざまな条件で賞味期限は異なり、スーパーなどで販売されている商品では一般的に60〜180日程度です。しかし、醤油に漬けて作られるぬれせんべいは水分を多く含んでいるため、賞味期限は15〜60日程度と、他のせんべいよりも短くなります。

せんべい・あられ・おかきは、封を開けてそのまま食べられるという手軽さが魅力です。また常温で保存できるため、非常食のひとつとしてストックしておくのもよいでしょう。食べ慣れている米菓があると、非常時でもほっとした気持ちになるかもしれませんね。

年代・性別を問わず広く好まれている米菓は、種類が豊富なことからも飽きのこないお菓子といえるでしょう。勉強の合間や休憩時間のお供に、せんべい・おかき・あられを味わってみませんか。

☆非常食になるおせんべいはローリングストックにするのがおすすめです。こちらもぜひご覧ください。
ローリングストックとは?おせんべいは非常食の定番。阪神淡路大震災30年の節目に備えを

【参考文献】
※1 Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/5eda6c27839c3ded1f103ff8ae0d5804cade7915
※2 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO17176370R00C17A6000000/
※3 農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/heya/kodomo_sodan/0004/03.html
※4 東邦大学
https://www.toho-u.ac.jp/sci/bio/column/031384.html
※5 東京農業大学
https://www.nodai.ac.jp/research/teacher-column/0058/
※6 JAみなみ魚沼
https://minamiuonuma.sanchoku-prime.com/blog/rice-mill
※7 三幸製菓
※8 ウェザーニュース
https://weathernews.jp/s/topics/202302/280235/
※9 京都菓子卸協同組合
https://kyotokashioroshi.jp/okashi04.html

(2024年2月5日新規掲載、2025年11月4日更新)

  • はせがわじゅん

  • ライタープロフィール
    はせがわ じゅん(管理栄養士)
    WEBメディアで食や栄養に関わる記事の執筆のほか、レシピ開発、栄養計算を行うとともに、年間約300名以上の特定保健指導に携わっています。
  • 澤 晶子

  • ライタープロフィール(リライト)
    澤 晶子(サワ アキコ)
    WEB編集者・ライター
    長年、学習塾・家庭教師勤務。フレンチ・イタリアンレストランでの勤務経験も豊富。趣味は食べ歩きと料理。季節のグルメのお取り寄せにも目がなく、特に地方限定銘菓が大好きです。