新型コロナウイルス感染症でインバウンドの減少が続いていましたが、2023年に入ると日本各地で外国人観光客の姿を見かけるようになりました。外国人観光客は日本を訪れることにどんな期待を持っているのでしょうか。外国人のお煎餅やお茶に対するイメージとともに着目してみました。
復活するインバウンド!コロナ前に迫る回復
インバウンド(inbound)は「物や情報が中心に向かって移動する」という意味の言葉です。※1
日本の観光業界では外国人観光客を指す言葉として使われます。日本のインバウンドは2013年頃から増加し始めました。コロナ前の2019年には年間約3188万人の外国人観光客が日本を訪れています。※2
新型コロナウイルスの感染が拡大した際は、多くの国で海外渡航の制限や入国制限などの措置がとられました。その結果、全世界的に観光客の行き来が減少します。
日本では、2020年から外国人観光客が減少し、2021年とコロナ前の2019年と比べると9割以上の減。経済的にもインバウンドの減少による打撃は大きく、観光関連の産業が厳しい状況に追い込まれたのは記憶にも新しいのではないでしょうか。※2
その後、日本で行われていた新型コロナウイルス感染症の水際対策が緩和されると、外国人観光客は2022年の秋頃から少しずつ増えてきました。2023年5月に新型コロナウイルス感染症は5類に分類され、海外からの入国者制限がなくなります。また、入国時のワクチン接種証明書や出国前検査証明書の提示も必要なくなり、日本を訪れやすくなりました。※2※3
最新の日本政府観光局(JNTO)の発表では、2023年10月に日本を訪れた外国人旅行者は推計で251万6500人。新型コロナ感染拡大前の2019年同月を初めて上回りました。また1カ月の旅行者数が200万人を超えるのは、これで5カ月連続となります。※4
外国人観光客が日本でしたいこと
日本を訪れる外国人に対して観光庁が行った消費動向調査の2023年4〜6月では、訪日前に期待していたこと(複数回答)として数値が高かったのは「日本食を食べること」でした。満足した飲食としては「肉料理」が最も多く、次いで「ラーメン」「寿司」となっています。※5
和食がユネスコの無形文化遺産になったことや、海外でも日本食を出すお店の人気が高まっていることも、日本食に対する期待値が膨らんでいる要因のひとつかもしれません。
文化庁の調査によると、日本を始めて訪れる外国人は生食に慣れておらず、刺身が食べられない人もいるようです。日本各地の伝統的な食事を楽しむ際、クジラやすっぽんのような食材は、文化的な価値観の違いによって避けられることもあるようです。※6
また、日本に長期間滞在などの場合、毎食を日本食にするのではなく、朝食は日本食以外のものにしたいという考えもあるようです。日本を何度か訪れたことがある外国人観光客の中には伝統的な日本食ばかりではなく、ラーメンのようなものも食べたい人もいるだろうとの意見も上がっています。※6
インバウンドの回復は消費の増加にもつながり、経済的な期待が高まっています。日本食に期待が集まれば、旅行先で食べる伝統的な日本食以外にも、日本人が日常的に食べているものの需要も増えそうです。
外国人は”おせんべい”のことをどう思っている?
日本を訪れた外国人観光客には日本人が普段から口にしているお煎餅やお茶に触れる機会もあると思います。外国人観光客は、お煎餅やお茶にどのようなイメージを持っているのでしょうか。
お煎餅は英語で「rice cracker」と呼ばれています。あるいは「せんべい=senbei」として紹介したり、販売しているところもあります。海外には日本のお煎餅に似たものを食べている国もあり、国によっては親しみやすいお菓子のようです。
お煎餅を含む米菓の輸出数量・金額を見ると、コロナ禍の2021年は5000トンを超え、金額も過去最高を記録しました。※7
外国人はお煎餅の食感が軽く食べやすいこと、ヘルシーなお菓子であることなどを評価しているようです。
☆外国人の方にお煎餅をはじめ、和菓子を贈ると喜ばれそうですね。
・「おもたせ」とは?悩みがちな手土産の定番は?
外国人はお茶をどう思っている?
次はお茶です。名前にお茶と付くものは世界各国で飲まれていますが、飲まれているお茶の種類はそれぞれに異なります。イギリスをはじめとした欧州、インド、アラブ諸国などでは紅茶、中国では緑茶やウーロン茶が親しまれています。※8
日本で生産されているお茶といえば、一般的には緑茶を指します。外国人が緑茶に対して持っているイメージは国によって異なり、緑茶に親しんでいる中国人は日本茶を好む傾向があります。一方で、欧米人の中には飲みなれない味のため、珍しさを感じる方もいるようです。※8
緑茶は近年、海外でも健康的な飲み物として注目されています。2022年の緑茶輸出量は10年前に比べて2.5倍に増え、その主な輸出先はアメリカ、欧州、台湾となっています。また、アメリカや欧州では緑茶の中でも抹茶人気が高いようです。※9
以上のように、お煎餅を含む米菓と緑茶の輸出量は増加傾向にあります。これは、どちらも健康的なイメージがあるからのようです。インバウンドでは日本食に対する期待値の高さに加え、お煎餅や緑茶の需要にも大いに期待できるかもしれません。
☆お煎餅などを食べることによって咀嚼の回数が増えるとうれしい効果も期待できます。詳しくはこちらで紹介しています。
・咀嚼で増える?マイオカインという幸せホルモンに似た物質の正体とは
【参考文献】
※1 新語時事用語辞典 インバウンド
https://www.weblio.jp/content/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%90%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%83%89
※2 観光白書 令和5年版 本文(第 I 部 観光の動向)
https://www.mlit.go.jp/statistics/content/001630305.pdf
※3 新型コロナウイルス感染症への対応
https://www.mofa.go.jp/mofaj/p_pd/pds/page25_002019.html
※4 訪日外客統計 2023年10月(推計値)
https://www.jnto.go.jp/news/20231115_monthly.pdf
※5 訪日外国人消費動向調査「2023年4〜6月期」集計結果 参考11
https://www.mlit.go.jp/kankocho/siryou/toukei/syouhityousa.html
※6 『食文化あふれる国・日本』プロジェクト 令和3年度食文化インバウンド促進のための動向調査事業
https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/syokubunka_inbound/pdf/93710601_03.pdf
※7 コメ・コメ加工品の輸出をめぐる状況-農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/syokuryo/220727/attach/pdf/220727-31.pdf
※8 お茶の科学 大森正司
※9 農林水産物品目別実績(輸出)2022 緑茶
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00500100&tstat=000001018079&cycle=7&tclass1=000001164294&stat_infid=000040047983&tclass2val=0
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ライタープロフィール
はせがわ じゅん(管理栄養士)
WEBメディアで食や栄養に関わる記事の執筆のほか、レシピ開発、栄養計算を行うとともに、年間約300名以上の特定保健指導に携わっています。
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