2025.03.03

炭水化物とは?うるち米やもち米に含まれる栄養素が体内エネルギーをつくる

みなさんは「炭水化物」という栄養素にどのようなイメージを持っていますか?肥満の原因になると思っている方もいるかもしれませんが、炭水化物は私たちが活動するためのエネルギー源となる重要な栄養素で、不足すると健康を損ねるおそれがあります。毎日を元気に過ごすには、適量の炭水化物を摂ることが大切なのです。今回は、炭水化物の働きや過不足による体への影響、適切な摂取量について解説し、糖質の摂取におすすめの食べ物をご紹介します。

体内のエネルギー源になる栄養素、糖質を含む炭水化物とは?

炭水化物はタンパク質、脂質とともに体のエネルギー源となる大切な栄養素で、「エネルギー産生栄養素」と呼ばれています。炭水化物は糖質と食物繊維に分けられますが、このうち糖質が消化吸収され、エネルギーとして利用されます。※1

近年はダイエットや健康管理の観点から「糖質制限」が注目され、糖質の摂取を避ける風潮もみられます。しかし、糖質にはほかのエネルギー産生栄養素にはない特性があり、エネルギー補給や健康維持に不可欠な存在です。

糖質の特性のひとつとして挙げられるのが、タンパク質や脂質よりも分解と吸収が早いという点です。そのため、炭水化物の摂取は迅速なエネルギー補給と疲労回復に役立ちます。実際に、アスリートの試合前後の食事には炭水化物が欠かせません。※2

さらに、脳や神経組織、赤血球などがエネルギーとして利用できるのは糖質の一種であるグルコースのみです。したがって、体の機能を十分に働かせるためには糖質を含む炭水化物をしっかり摂ることが重要といえます。※3

炭水化物の不足や摂りすぎがどんなことにつながる?

炭水化物

糖質制限に取り組み、炭水化物の摂取を控えている人もいるでしょう。しかし、炭水化物の摂取量が少なすぎるとエネルギーが足りなくなり、疲労感をまねく可能性があるため注意が必要です。※4

先ほど述べたとおり、脳がエネルギーとして利用できるのは糖質の一種であるグルコースだけなので、炭水化物が不足すると集中力が低下しやすくなります。さらに、足りないエネルギーを補うため、体はほかのエネルギー産生栄養素を利用しようとします。※4

エネルギー産生栄養素のひとつであるタンパク質は、筋肉の材料でもあります。炭水化物が不足すると体は筋肉を分解し、そのタンパク質をエネルギーとして使おうとするため、筋肉量が減少するおそれがあります。特にご高齢の方では運動能力が衰え、将来的に寝たきりや要介護状態にもつながる「サルコペニア」のリスクも高まるでしょう。※2

一方で、炭水化物を摂りすぎると、エネルギーとして消費されなかった余剰分が中性脂肪として体に蓄積され、肥満や生活習慣病の原因となります。このように、炭水化物は少なすぎても多すぎても体に悪影響を与えるため、健康を維持するには適正な量を摂取することが大切です。

健康のためにも運動とバランスのよい食事を心がけよう!

炭水化物

それでは、炭水化物の適正な摂取量はどのくらいなのでしょうか。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」では、炭水化物の摂取量について、1日に摂取するエネルギーの50〜65%を目安とするよう推奨しています。※3

たとえば、日中の仕事はデスクワーク中心で、通勤や買い物などで歩くほか軽い運動習慣がある40歳女性の場合、1日に必要とするエネルギー摂取量は2050kcalなので、炭水化物から摂るエネルギー量の目安は1025〜1333kcalです。

炭水化物1gのエネルギー量は4kcalですから、1日に256〜333g、1食あたり85〜111g程度の炭水化物を摂取すればよいことになります。茶碗1膳分、約150gのご飯に含まれる炭水化物は約56gです。ご飯とおかずを1日3食しっかり食べ、そのほかの食品からも炭水化物をある程度摂るとしても、適正な摂取量の範囲内に収まると考えられます。※5

「炭水化物を少し食べすぎたかも」と思ったときは、ウォーキングやジョギングなどの運動で余分なエネルギーを消費するよう心がければ、健康に大きな影響は出ないでしょう。日々を健やかに過ごすには、食事に気を配るとともに適度に体を動かすことが重要なのです。

うるち米やもち米を食べて、活力あふれる毎日を過ごそう

炭水化物

炭水化物といえば、米を思い浮かべる方が多いでしょう。ほかにもパスタやうどん、パンなどの穀類を原料とする食品に、炭水化物は豊富に含まれています。穀類以外で炭水化物が多い食品としては、じゃがいもやさつまいもなどのいも類、バナナやみかんなどの果物、砂糖が挙げられます。

なかでも、効率よくエネルギーを摂取したいなら米がおすすめです。米には、食事でご飯として食べる「うるち米」と餅の原料になる「もち米」がありますが、どちらも炭水化物をたっぷりと含んでいます。ご飯や餅はもちろん、間食にせんべいやおかきを食べれば、炭水化物を十分に摂取できます。

米はグルテンフリーである点も注目したいポイントです。グルテンとは小麦に含まれる成分で、小麦アレルギーを引き起こす原因物質のひとつとされています。グルテンを含まない米は、小麦アレルギーの方にとって貴重なエネルギー源となります。

小麦アレルギーは子どもに多くみられますが、米を使用した食品なら小麦アレルギーのある子どもはもちろん、家族で同じものを一緒に味わえます。おやつにはおかきやおせんべいをみんなで楽しく食べ、炭水化物を摂取してはいかがでしょうか。

炭水化物は、体内でエネルギーとして利用される重要な栄養素です。ご飯やおせんべい、おかきを食べてエネルギーを補い、活き活きとした毎日を過ごしましょう。

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【参考文献】
※1 森永製菓株式会社
https://www.morinaga.co.jp/protein/columns/detail/?id=119&category=health
※2 上西一弘「栄養素の通になる 第5版」女子栄養大学出版部, 2022.(P54〜57)
https://eiyo21.com/book/9784789509275/
※3 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316585.pdf
※4 公益財団法人 長寿科学振興財団
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/tansuikabutsu.html
※5 文部科学省
https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_01110.html

  • いしもとめぐみ

  • ライタープロフィール
    いしもとめぐみ
    管理栄養士。一般企業勤務を経て、栄養士資格を取得。病院給食、食品メーカーの品質管理、保育園栄養士を経験。現在は、栄養・健康分野の記事執筆を中心に活動中。日本ワインとおいしいものが大好き。