2月14日はバレンタインデー。寒い季節に愛や友情を伝える温かくロマンチックなイベントとして、今や世界中で祝われています。ところで、そもそもバレンタインデーにはどんな由来があるのか、そしてなぜチョコレートを贈るのかご存じでしょうか。
本記事では、驚くほど古い歴史を持つバレンタインデーの由来や、日本とは異なる世界各国のバレンタインデーの過ごし方を解説し、贈り物の選び方のヒントをご紹介します。
バレンタインデーの由来は? 聖人「バレンタイン」物語

「バレンタインデー(Valentine's Day)」は、一般的にはキリスト教の聖人「聖ヴァレンティヌス(英語でバレンタイン)司祭」を記念する日に由来する、というのが定説となっています。
「バレンタイン」司祭(司教だったという説もあります)とは、西暦3世紀のイタリアに実在した人物です。当時のローマ皇帝は、「兵士たちに妻や子どもができると士気が下がってしまう」という理由から、兵士の結婚を禁止していました。これは、戦いに行く前に愛する人と結婚したいと考える恋人たちにとっては納得しがたい理由でした。そうしたなかで、バレンタイン司祭は悲しむ彼らを哀れに思い、ひそかに兵士たちを結婚させていました。※1
しかし、この行為が明るみに出たことで、バレンタイン司祭はローマ皇帝の怒りを買います。それでも考えを変えなかったバレンタインは、ついに斬首されてしまいました。その日が、西暦269年の2月14日だったとされています。そして約200年後の西暦496年、当時の教皇によって2月14日は殉教者「聖バレンタインの日」と定められました。
もっともヴァレンティヌス(ヴァレンティーニ)という名前自体は当時のイタリアでは比較的一般的なものであったとされています。そのため、当時のローマには同名の人物によるさまざまなエピソードが存在し、彼らの逸話が重なり合って生まれたのが「聖バレンタインの伝説」であると考える人もいます。いずれにせよ、「バレンタイン」という名を持つ記念日が、西暦3世紀のイタリアに起源を持つことは確かなようです。
バレンタインデーの起源は古代ローマまでさかのぼる?!
愛の祭りの古い歴史

一方、2月14日のバレンタインデーの起源については、はるか古代ローマ(西暦前8世紀〜4世紀)にまで遡るという説もあります。もともとローマ神話では、2月14日は家庭と結婚の女神「ユノ」に関係する祝日とされていました。さらにその翌日15日からはローマ近辺で豊穣や多産を祈願する祭りが行われており、14日は祭りの準備を行う日でもありました。※2
この祭りは「ルペルカリア祭(Lupercalia)」と呼ばれ、男性がヤギや犬の皮で作られた革のひもを手に、未婚の女性をたたいて回るという風変わりなお祭りですが、当時は非常に人気の高いイベントでもあったようです。※3
当時、男性と女性は別々の場所で生活することが一般的でしたが、「ルペルカリア祭」は若い男女が出会い、恋に落ち、結婚するきっかけにもなっていました。出会いの機会が限られていた若者たちにとって、この祭りは特別な意味を持つ行事であったと考えられます。
このような古代ローマの土着の祭りは、この地域にキリスト教が広まった後も続けられました。やがて、キリスト教化をすすめようとするローマ皇帝や教会の意向により、この人気の祭りはバレンタイン司祭の逸話と結び付けられ、恋愛の記念日として広まっていったと考えられています。
2月14日の「バレンタインデー」の由来には諸説ありますが、現在では、前述の「聖ヴァレンティヌス」由来説と、「ルペルカリア祭」由来説、あるいはその両方が組み合わさった説が有力とされています。
バレンタインチョコの普及
バレンタインデーは「愛を告白する日」として世界的記念日に

古い歴史とさまざまな由来を持つバレンタインデーですが、バレンタインがロマンチックな「恋人たちの日」「愛を告白する日」という意味合いを持つようになったのは、14世紀以降です。
この普及に大きな役割を果たしたのが、高名な英国詩人ジェフリー・チョーサーです。彼は『鳥たちの議会』という作品(1382年頃)の中で、2月14日の聖バレンタインの日を「鳥たちがつがいとなる相手を探す日」として描き、恋人たちが愛を誓う日としてのバレンタインデーを広めました。さらに、1600年頃に書かれたシェイクスピアの『ハムレット』では、主人公ハムレットの恋人オフィーリアが彼との逢瀬を思い出し、「明日は聖バレンタインデー」と歌うシーンが登場します。※4
18世紀になると郵送システムの発達に伴い、まずイギリスでバレンタインカードの郵送が習慣化しました。当時は郵便料金が高額でしたが、1835年には6万枚のバレンタインカードが郵送されたといいます。アメリカでも独立戦争後、手書きのバレンタインカードが大流行し、現在では2億枚近くのカードが送られているそうです。※3
19世紀にはイギリスの製菓会社がバレンタイン用のチョコレートを販売し、バレンタインデーは商業戦略と結びついて普及しました。20世紀に入ると、カードとともにお菓子や宝石を贈る文化が定着し、贈り物をする習慣は現在に至るまで続いています。
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婚姻届の提出ラッシュ?! 海外バレンタインデー事情

バレンタインデーは洋の東西を問わず、世界各国で特別な日として祝われています。国によって過ごし方はさまざまで、欧米では男性から女性に贈り物をするのが一般的です。花やジュエリー、カードなどが贈られることが多く、夫婦や恋人が二人きりで過ごすため、ちょっとおしゃれをしてレストランでディナーを楽しむ国もあります。
タイでは、バレンタインデーは「男性から女性に愛を告白する日」とされ、定番のプレゼントは赤いバラとクマのぬいぐるみです。バレンタインデーにプロポーズする人も多く、「愛の街」を意味するバーンラック地区の区役所は、この日には婚姻届を提出するカップルでにぎわうといいます。※5
台湾や中国では、2月14日のほかに旧暦7月7日も「恋人の日」とされ、カップルが贈り物をしたり愛を確かめ合ったりします。一方、メキシコやフィンランドのバレンタインデーは「愛と友情の日」とされ、カップルだけでなく、友人同士でも感謝を伝え合います。
発祥の地であるイタリアでは、バレンタインデー翌日の2月15日が「シングルの日(聖ファウスティーノの日)」とされ、恋人のいない人たちが集まってパーティを開く習慣があります。また韓国では4月14日を「ブラックデー」と呼び、バレンタインデーやホワイトデーに縁がなかった人たちが、友人同士で黒い服を着て、真っ黒なジャージャー麺を食べるというユニークな文化があります。「来年こそは!」と励まし合ったり、イベントとして楽しんだりする日として定着しています。※6
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日本でも国民的イベントに
パティシエ・ショコラティエが彩るバレンタインデー

日本には戦後、海外からバレンタインデーの習慣が伝わりました。1960年前後から流行し始め、1970年代には「好きな人にチョコレートを渡して告白する」という形のバレンタインデーが行事として定着しました。
海外でもチョコレートはバレンタインの贈り物として定番でしたが、日本では特に、神戸のある製菓会社の「バレンタインにチョコレートを」というプロモーションが大きな成功を収めたとされています。甘くて可愛いチョコレートは、愛の記念日の贈り物として広く受け入れられました。※2
現在では、日本の多くのデパートやスーパーが2月14日に向けてバレンタイン特設売場を設けています。世界の有名パティシエやショコラティエによる高級チョコレートをはじめ、各お菓子メーカーが趣向を凝らした多くの商品が並び、“世界チョコレート博覧会”のような光景が繰り広げられます。人気商品は予約や抽選が必要な場合もあり、都市部のデパートでは、人気パティシエやショコラティエの来日にあわせてサイン会や実演販売が行われることもあります。
バレンタインデーは日本では冬の風物詩ともいえる一大イベントとなっており、チョコレートの年間消費量のおよそ2割がこの日に集中するとされています。※2
☆チョコレートをはじめとするお菓子と心の関わりについてはこちらをご覧ください。
・間食とは何か?おやつがもたらす心身の幸福感とトリプトファンの関係
「ホワイトデー」は日本の文化 独自のバレンタイン習慣とは

世界中の多くの国でバレンタインデーは行われていますが、興味深いことに日本では独自の進化を遂げてきました。まず前述の通り、バレンタインの贈り物がほぼチョコレートに限定されてきたのは日本特有の習慣です。
また欧米をはじめとする多くの国では、バレンタインデーは「男性から女性へ贈り物をする」ことが多いのですが、日本ではその逆で、「女性が好きな男性にチョコレートを贈る」という形が基本となっています。これも百貨店やチョコレートメーカーがターゲットを女性に絞って行ったプロモーションの影響によるものと考えられています。こうして、今では日本独自の習慣として定着しました。学生時代に、バレンタインにまつわる甘い思い出や、あるいはほろ苦い思い出を持っている方も多いのではないでしょうか。
さらに、バレンタインデーの1か月後の3月14日には、もらったチョコレートにお返しをする「ホワイトデー」の習慣もありますが、もともと日本には「何かをもらったらお返しをする」という「お返し文化」があり、お菓子業界がこの習慣を上手にプロモーションに取り入れたといわれています。「黒い」チョコレートに対して、「白い」マシュマロやキャンディをお返しする(近年では白にこだわらない場合も多い)という発想は、なかなか巧みなアイデアだといえるでしょう。※7
さらに、お世話になった方や友人に贈る「義理チョコ」も、日本で生まれた習慣です。感謝や気配りといった、社会的なつながりを重視する日本ならではの文化を反映しているのかもしれませんね。
☆ホワイトデーにもぴったりのグミ。種類と成分などもっと詳しいグミ情報はこちら。
・グミにはどんな種類がある?グミは何でできている?ブームの秘密を探る
友情の証しには「友チョコ」、有名人には「推しチョコ」!
日頃の感謝や自分へのご褒美を

国民的行事ともいえるバレンタインデーですが、近年は少しずつ趣が変わってきているようです。好きな人に贈る「本命チョコ」だけでなく、応援している有名人に贈る「推しチョコ」、友達や家族に贈る「友チョコ」「家族チョコ」、さらには気に入ったチョコレートを自分へのご褒美として購入する「自分チョコ」や「ご褒美チョコ」など、多様な楽しみ方が広がっています。
バレンタインデーには、この時期にしか手に入らない珍しいチョコレートが数多く店頭に並ぶため、贈り物用だけでなく、自分用にも思わず購入してしまいますよね。また、賛否が分かれる「義理チョコ」は、近年では「感謝チョコ」などと呼ばれるようになり、その意味合いにも微妙な変化が見られるようです。
「バレンタイン=女性から男性へチョコレートを贈る」という従来の「基本形」が変わりつつあることは、2025年に行われたあるアンケート調査からも読み取れます。この調査では、男性の約5割がバレンタインギフトを購入すると回答しました。また、ギフト購入者の半数以上が「チョコレート以外」の品物を贈ると答えており、必ずしもチョコレートにこだわらない人が増えてきているようです。※8※9
日本では、男女を問わず、身近な人に気持ちを伝えることを照れくさく感じる人が少なくないかもしれません。バレンタインデーは、そうしたシャイな人にとって、日ごろの感謝や愛情を伝えるよいきっかけになるのではないでしょうか。この機会に、大切な人へお気に入りのお菓子を手に、「ありがとう」や「大好き」を伝えてみてはいかがでしょうか。
☆チョコレートなどが苦手な方には、おせんべいやかりんとうをおしゃれにラッピングして、気軽な贈り物として差し上げるのも良いかもしれませんね。
・「雪の宿」シリーズ
・「ミックスかりんとう」
【参考文献】
※1 甘春堂
https://www.kanshundo.co.jp/museum/saijiki_yogo/valentain01.htm
※2 株式会社阪急阪神百貨店
https://web.hh-online.jp/hankyu-food/blog/lifestyle/detail/001387.html
※3 株式会社日経ナショナル ジオグラフィック
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/5628/
※4 株式会社ル・キュア
https://www.rakuten.co.jp/le-cure/contents/valentine/
※5 テレビ朝日
https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000336969.html
※6 日本気象協会
https://tenki.jp/suppl/y_kogen/2015/04/13/2911.html
※7 株式会社阪急阪神百貨店
https://web.hh-online.jp/hankyu-food/blog/lifestyle/detail/000743.html
※8 ナイル株式会社
https://www.seohacks.net/column/22637/
※9 東京新聞
https://adv.tokyo-np.co.jp/prtimes/article109498/
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ライタープロフィール
澤 晶子(サワ アキコ)
WEB編集者・ライター
長年、学習塾・家庭教師勤務。フレンチ・イタリアンレストランでの勤務経験も豊富。趣味は食べ歩きと料理。季節のグルメのお取り寄せにも目がなく、特に地方限定銘菓が大好きです。


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